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アルビス代表取締役社長 池田和男
生鮮・総菜強化でDgSに対抗!北陸ドミナントを深耕し1000億円めざす

2005年に主力事業を卸売業から食品スーパー(SM)に転換し、今や北陸最大手SMとなったアルビス(富山県)。北陸エリアは人口減少が続くだけでなく、食品を低価格で販売するドラッグストア(DgS)チェーンが出店攻勢をかけるなど、厳しい競争環境が続いている。そのなかで、同社はどのような成長戦略を描いているのか、18年5月に社長に就任した池田和男氏に聞いた。

「生鮮・総菜の品質と日用品の品揃えでDgSと差別化する」

ライバルはSMよりもDgS

──まず、2019年3月期(今期)の状況について教えてください。

いけだ・かずお●1961年7月16日生まれ、85年3月近畿大学商経学部卒業。85年4月丸伸入社。2003年4月アルビス執行役員就任。05年6月SM事業部長、06年4月ホールセール事業部長を経て、06年6月取締役就任。11年4月常務取締役、17年4月専務取締役。18年5月代表取締役社長就任(現任)

池田 天候などの変動要因はあったものの、売上高についてはほぼ予定どおりに進んでいます。もともと今期は上期に4店舗を閉鎖し、その周りにある既存店で稼いでいこうという計画を立てていました。また、SMの競合店が当社の商圏範囲に3店舗出店することも事前に把握していました。その影響も含め、おおむね予定どおりです。

 

──商品カテゴリー別に見ると、それぞれどのような状況ですか。

池田 部門別では、お盆前後で傾向が変わりました。水産はアニサキス問題がずっと尾を引いていたところに、猛暑の影響もあり、お盆前まで数字が上がりませんでしたが、9月以降、刺身の盛り合わせや寿司がよく売れるようになりました。農産は台風などの影響で相場が上がってきています。

 また、日配品やグロサリーの売上高構成比が伸びてきています。DgS対策の1つとして、一定期間価格を固定する「スーパー・プライス」などの施策を強化しています。

 上期トータルで見ると、各カテゴリーで全体的に伸びてきています。

 

──競争環境について、どのように分析されていますか。

池田 北陸エリアでは、SMを出店する企業の数がすでに減ってきています。当社以外には、大阪屋ショップ(富山県/平邑秀樹社長)やバロー(岐阜県/田代正美社長)、ハニー(福井県/湧口満弘理事長)くらいです。しかし、SMの減少速度以上に人口減少も進んでおり、買物客の奪い合いが激しくなっています。

 また、他業態との競争で言うと、以前まではコンビニエンスストア(CVS)の影響を少なからず受けていましたが、近年、北陸ではCVSの店舗は増えていません。それに代わって、DgSが出店攻勢をしかけています。

 

──ライバルはDgSということでしょうか。

池田 そうですね。「クスリのアオキ」や「ゲンキー」、「ウエルシア」などが近くに出店すると、大なり小なり影響はあります。

 その対策として、生鮮食品、総菜を強化することで、鮮度と品揃えで差別化を図っています。とくに、北陸エリアは新鮮な魚を求めるお客さまが多いので、水産を強化しています。さらに、SMの来店頻度の高さを生かして、酒類や雑貨の購買につなげるねらいで、それらの品揃えを厚くした実験店舗を2店舗つくりました。

PCや基幹システムなどインフラを整備

──新社長として、どのような経営方針を打ち出しますか。

池田 今期は3カ年中期経営計画の最終年度ですので、計画どおりにインフラ整備を行っています。

 今年10月には7年ぶりに基幹システムの入れ替えを行いました。従来のシステムよりも処理速度が早くなるだけでなく、本社や店舗の販売計画書も電子化することにより、計画と実績を簡単に検証できるように変更し、業務の効率化を図ります。これにより、ペーパーレス化にもつなげていきます。ID-POSのデータ分析も来期(20年3月期)から自社で行います。

 さらに、来年4月には約3000坪の土地に、総菜と精肉のプロセスセンター(PC)を新設します。これにより、安全・安心の商品を安定的に供給することをめざします。今期中にそれらの準備をすべて終わらせる予定です。

 

──PCをどのように活用しますか。

池田 まず総菜については、現状アウトパック比率が約4割です。PCを活用することで、アウトパック比率を高め、店内作業の省力化につなげます。ただ、やみくもにPC化するのではなく、完全にPCで加工するもの、途中までPCで加工して店内で仕上げるもの、完全に店内でつくるものに区分けすることで、差別化を図ります。

 精肉については、これまでインストア加工をしていましたが、PC加工に切り替えていく予定です。

 一方、お客さまとの接点となる販売にはこれまで以上に人手を割いていきたいと思っています。全部機械化するのではなく、省力化する部分と人手をかける部分にメリハリをつけ、お客さまに満足していただける店づくりを行っていきたいと考えています。

北陸1000億円の次は中部エリアに進出

──今後の出店についてはどのようにお考えですか。

池田 アルビスは富山県、石川県、福井県の北陸3県をドミナントエリアとして出店してきました。このエリアにまだ出店できる余地があると思っており、北陸エリアだけで売上高1000億円というのを以前から目標に掲げてきました。今期計画が835億円ですので、1000億円は遠くないうちに達成できると考えています。

 出店ペースとしてはスクラップ&ビルドや大型改装を含め、毎年3~5店舗をめざしています。当社は店舗フォーマットを近隣型ショッピングセンターの1000坪タイプ、標準規模の500~600坪タイプ、小型の300坪タイプに分類しています。今年9月にスクラップ&ビルドでオープンした「アルビス姫野店」(富山県高岡市)は約600坪、11月にオープンする予定の「アルビス丸の内店」(同)は300坪の小型タイプです。

 

──19年4月には岐阜県美濃加茂市への出店も予定されております。

池田 北陸エリアのドミナント深耕と並行し、新たな成長戦略として中部エリアのマーケットを獲っていきたいと考えています。美濃加茂市は一見、既存のドミナントエリアから離れているように見えますが、物流面で本社から高速で2時間半、いちばん遠い店舗と比較してプラス30分という距離です。

 「アルビス美濃加茂店」はこれまでやってきた標準タイプの店舗で採用しているMD(商品政策)に加えて、地元で食されている商品を多く揃える予定です。

 

──美濃加茂店を足掛かりに、中部エリアで今後も出店していくのでしょうか。

池田 まずは1店舗目を成功させるということが前提条件となりますが、店舗開発の部隊は、次の店舗の候補となる岐阜県のほかの物件にも当たっています。

 岐阜県はバローの本拠地であるほか、コスモス薬品(福岡県/横山英昭社長)やオークワ(和歌山県/神吉康成社長)など県外企業が多く進出しています。競争もありますが、人口が富山県の約2倍あるなど、魅力的なマーケットが広がっていると思います。

 価格が安いことが岐阜県のマーケットの特徴なので、アルビスは生鮮・総菜の品質で差別化を図っていきます。

 

──M&A(合併・買収)についてはどのようにお考えですか。

池田 これまで当社は規模の小さい店のM&Aは何回もやってきており、得意とする分野です。ローカルスーパーとして、北陸のドミナントエリアを押さえる動きと、中部エリアなど新しいエリアでアルビスの存在感を出していく、という2つの方向性で、話があればM&Aは積極的に考えていきたいと思っています。

 

──17年9月には農業事業に参入されました。どういうねらいがありますか。

池田 障がい者雇用の一環として、長野県中野市と提携し、「農福連携」事業として「アルビスファーム信州なかの」をスタートしました。約5ヘクタールの農地で、ズッキーニやじゃがいも、玉ねぎ、かぼちゃなどを育てています。今年は約20店舗で販売していますが、お客さまには結構人気でよく売れています。

 しかし、まだ差別化商品といえるわけではありません。これから耕作面積を増やしていき、再来年には減農薬や「エコファーマー」認定を取得するなど、品質を高めることで、アルビスオリジナルの商品に育てていきたいと思っています。

 

──今後の課題は何でしょうか。

池田 いちばんは人です。採用、教育に投資していきたいと思っています。安心して働くことができるように、定年の延長や時短や働く場所への配慮ができるように「限定社員」制度などを今年4月から新たに導入しました。海外や国内の研修も回数を増やし、アルビスの未来の店づくりを議論できる社風にしていきたいと思います。

 

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