連載「若手社員の離職率を下げる!」 第2回は上司と部下の関係性に焦点をあてる。若者の離職理由から、離職者を出さないためには、人間関係をいかに円滑にするかが重要だと前回説明した。では店長など上司は部下に対し、どのように接するべきなのだろうか?
いまの経営者の仕事は
社員の気持ちを管理すること
重要なのが、受け手(若者)と送り手(上司)の意識の差、である。
筆者は企業の人事相談も行う関係上、「部下が言うことを聞かない」という相談をよく受ける。ただ、詳しく話を聞いてみると、部下が悪いのではなく、仕組みが悪い、ということが多々ある。例えば仕事のやり方が明確になっていなかったり、対応が人によって違っていたりなどだ。特に近年では、世代間でこうしたソフト面での意識ギャップが生まれている。
「そんなこと言わなくてもわかるだろう」
「言われなければわかりません」
こうした上司・部下との意識の間を埋めることは、実は非常に難しい。特に小売業のように、パートやアルバイトの割合が多い職場では、こうしたギャップが生まれやすい傾向にあるようだ。
その際問題となるのが、抽象的な指導だ。
今の若い世代では、論理的に指導すると比較的好印象に受け止められる傾向にある。「なぜこうしなければならないか」、「こうすればどのような効果があるか」、などを説明すれば納得するケースが多い。
逆に「言われたとおりにしろ」という指導では、「何の意味があるのか?」と反発が生じてしまう。
これはどちらが良い/悪いという問題ではない。離職率を下げるためにはやはり、「若者が何を考え、どのような指導なら受け止めてくれるか」、ということを考慮すべきなのだ。
以下は小売業界とは別の業界の話となるが、最近経営者からこんな話を聞かされた。
バブル期の経営者は、社員の売り上げを管理するのが仕事だった。
2000年以降の経営者は、社員の仕事の仕方を管理するのが仕事だった。
近年の経営者は、社員のモチベーションを管理するのが仕事だった。
そして今の経営者は、社員の気持ちを管理するのが仕事になってきている。
従業員をマネジメントする手法がより細やかになってきていることがわかる。
一時期、的確な指導や助言によって、部下のやる気を引き出したり、論理的に考えさせたり、行動させる「コーチング」という技術が注目された。もちろんコーチングは、優秀な人材が、何時間も勉強し、実践を積んではじめて身に付けることができるもので、だれでも簡単に実践できるわけではない。
一方、部下の「気持ち」を理解しようと心がけることは、そこまで難しくはない。管理者一人ひとりの意識と心がけ次第で、いくらでも部下の気持ちに寄り添えるはずだ。
飲み会ではなく、昼食会が連帯感を作る
とはいえ、気持ちの問題に対する解決方法は、あやふやなものになりがちだ。そこで、制度や仕組みを活用して、職場の雰囲気を良くすることをおススメする。
特にイベントの活用は、ぜひ参考にしたい。
職場のイベントというと、飲み会が真っ先に頭に思い浮かぶかもしれない。しかし、職場の飲み会が、人間関係をプラスにするかというとそうは言い切れない。近年の若者は、職場での飲み会に否定的な意見を持つ人も多くなってきているからだ。実際、若者による職場の飲み会離れは深刻だ。仕事上の付き合いなのに、給与が出ない、として不満を口にする人も少なくない。
では飲み会以外に、どのようなイベントを開けばよいか。たとえば誕生日、またはその直近の勤務日に、仕事を始める前に皆で「おめでとう」といって簡単なプレゼントを渡す。それだけでモチベーションが高まった事例がある。
また“勤務時間中に”、上司や経営者と昼食を定期的にとる、といったことでも、成果が出ているようだ。普段の職場を離れ、会社の居心地や将来、仕事のことを話すことで、上司と本人との関係性が強まり、相互理解が深まるからだ。
イベント活用の一つとして、地域活動への参加なども挙げられる。地域貢献の一環として取り組むことで、離職率を大幅に下げる効果が見込めるのである。
例えば地域のお祭りなどへの参加。イベントに屋台を出して販売をする、という簡単なものだが、祭りの持つは強いイベント性が連帯感をつくってくれる。普段の店舗とは違った雰囲気、客層などを相手に皆で協力して、成果を出す。このわかりやすさが、チームの結束力を強め、職場の風通しを良くするきっかけになることがあるのだ。
地域貢献には他にも効果がある。一時期、CSRという言葉が流行った。これは「企業の社会的責任」と訳され、ある一定以上の利益を得ている企業は、その利益を社会に還元する必要がある、というものだ。
このCSRの効果とはなんだろうか?
1つは企業イメージを向上できるマーケティング効果だ。そしてもう1つは、従業員のモラルが向上し、離職率が下がるという効果である。なぜそのようなことが起こるのか、次回、解説していこう。