イオン北海道(北海道/青栁英樹)は2020年3月、同じイオン系の食品スーパー(SM)、マックスバリュ北海道を吸収合併した。合併は、親会社のイオン(千葉県/吉田昭夫社長)が打ち出した、グループSMの再編戦略に基づいたものだ。全国を6地域に分け、地域ごとに傘下SMが経営統合することによって、物流、商品開発、デジタル化などへの成長投資が可能なレベルの売上規模に引き上げることが戦略のねらいだ。
合併で売上規模が1.7倍に
北海道で経営統合したのが上記の2社だ。合併直前の2019年度(20年2月期)売上高は、イオン北海道が1859億円、マックスバリュ北海道が1317億円。新生イオン北海道の初年度にあたる20年度の売上高は3199億円となり、旧イオン北海道からすると1.7倍に拡大した。
売上規模だけでなく業態も拡大した。旧イオン北海道が展開してきたのは総合スーパー(GMS)やスーパーセンター、小型SM。旧マックスバリュ北海道が展開してきたのはSMやディスカウントストア(DS)。合併した結果、新生イオン北海道はGMS、SM、DSの3業態を主力とする小売業になった。これに伴い、商品別売上構成比も大きく変わった。合併前は食品62%、衣料18%、住居余暇20%だったが、合併後は食品79%、衣料8%、住居余暇13%となり、食品の売上構成比が6割から8割に跳ね上がっている。
直近会計年度の21年度業績を見ると、売上高3216億円で対前年度比0.5%増。業態別では、GMSが同0.6%増の1761億円、SMが横ばいの973億円、DSが同1.2%増の412億円。衣料・住居余暇の売上は振るわなかったが、内食需要を取り込んだ食品がそれをカバーした。営業利益は66億円で3割近い減益。積極投資による経費増を見込み当初から減益計画だったが、計画からも21億円下振れした。
しかし22年度は、第1四半期に3業態でいずれも既存店売上が前年同期を上回り、営業増益となる好スタートを切った。第2四半期累計期間の既存店もプラス成長となるなど足元の売上は好調を続けている。その結果10月5日に発表された23年2月期第2四半期決算は、同期より収益認識基準会計を適用したため、売上高こそ対前期比で2.9%減となるものの、営業利益は32億1400万円を確保して同53.8%増と大幅増益を達成した。
成長戦略のカギは「食品強化」
では、中長期的にイオン北海道はどのように成長を図ろうとしているのか。
2021年度から25年度までの5カ年の中期経営計画にはそれが明示されている。自社の将来像を「2025年のありたい姿」として定めた。そのまま引用すると、「『食』を基軸に、便利で楽しく、健康な毎日の暮らしをお手伝いする、北海道のヘルス&ウエルネスを支える企業」。ヘルス&ウエルネスはイオングループの成長戦略の一つでもある。これを食の点から提供するという意味が読み取れる。具現化するために「商品」と「店」の競争力向上が欠かせいないとして、商品では「イオン北海道独自の魅力的な商品」、店では「安全・安心、便利で楽しい店」を掲げ、競争力向上に取り組むという。
合併によって売上の8割を占めるようになった食品。これを成長戦略の中心に据えるのは当然だろう。
中計における主要テーマが食品の強化だ。食品強化のために取り組むのが「生鮮の強化」と「商品開発の強化」の2つだ。
生鮮の強化では、食の宝庫である北海道の各地域との産地連携を打ち出す。たとえば、農産では地場限定商品の導入、水産ではエリア商品の発掘・開発、エリアバイヤーによる産地買い付け、畜産では地域ブランド肉の強化といった施策を挙げている。
商品開発の強化では、食品商品開発部を新たに設け、新生イオン北海道のスタート時点から商品開発体制を強化している。加えて、商品開発強化のための重要インフラとなるイオン石狩プロセスセンターを新設した。21年8月に稼働を始めており、畜産・デリカを製造し、札幌圏にある50店舗強に供給している。地域食材を生かした商品開発のほか、アウトパック供給を拡大することで品揃え強化や店内作業の効率化を図るのがねらいだ。プロセスセンターを活用し、食のSPA(製造小売)化を図り、「強い食」の実現をめざすという。
北海道の食品小売シェアトップへ
中計では数値目標も掲げている。
21年度実績の売上高3216億円、営業利益66億円、売上高営業利益率2.1%、ROE(自己資本利益率)6.1%に対して、最終年度にあたる25年度には売上高3800億円、営業利益157億円、売上高営業利益率4%以上、ROE10%以上を計画する。とくに食品は、21年度実績2537億円から3000億円に拡大し、北海道内の食品小売シェアトップをめざすとしている。
目標売上3800億円を達成するために必要となる成長率は年率4%程度。積極的な店舗投資を計画しており、計画通り進めば達成は十分可能だろう。だが、営業利益達成のハードルはかなり高い。売上高営業利益率は、旧イオン北海道で4%を超えているものの、旧マックスバリュ北海道では1%台にとどまっている。その点では、SM事業の収益性をどう高めるかが課題になる。
合併のねらいでもある成長投資についてはかなり積極的だ。5カ年の投資総額は725億円(年平均145億円)。内訳は店舗投資に590億円、インフラ投資に135億円。8割を店舗投資に振り向ける計画で、売上目標の達成をめざす強い意思がうかがえる。
新規出店では、SM、DSなど食品業態を5年間で69店舗出店する計画だ。このうち50店舗は小型SMの「まいばすけっと」だ。新型店にも挑戦し、札幌圏で出店可能な中小型店10店舗を出店する。GMSは2店舗のスクラップ&ビルドを計画するのみだ。
積極投資による新たな成長をめざし始めたイオン北海道。25年のめざす姿に向けて変革は続く。