本特集からもわかるように、小売業の経営において「サステナブル」は欠かせないキーワードの1つとなりつつある。しかし、サステナビリティに取り組むことは実際に企業の成長に結びつくのだろうか。そして今後、各社はどのようにサステナブルな施策を取り入れていけばいいのか。6月に発売された書籍『小売業の実践SDGs経営』の著者が、実践するうえでのポイントを解説する。
外部環境の厳しい今だから始めよう!
2022年は「小売業のSDGs経営元年」となりそうだ。各種ニュースでも「SDGs(持続可能な開発目標)」がキーワードに取り上げられ、日本政府は「SDGsアクションプラン2022」を発表し、23年G7議長国として、30年に向けた持続可能性な社会の実現に意欲を示した。
そうした変化は株式市場にも及んでいる。22年4月4日、東京証券取引所の上場区分が再編され、プライム企業を中心に非財務情報の開示義務が強化された。上場企業にとって「SDGs経営」とその情報開示は待ったなしで進めなければいけない状況となっている。
ここで、本稿でいう「SDGs経営」とは、一言でいうと「企業の目的である長期の維持発展を実現するために、すべてのステークホルダーとの関係を維持強化させる責任ある取り組み」を示す。その目的は、単なる社会貢献ではなく、これを通じて企業を維持・発展させることである。
そうはいっても、昨今の光熱費高騰や店舗間競争の激化など、目の前に課題が山積するなか、「SDGsに取り組んでいるどころではない」と感じる企業も多いかもしれない。しかし、実はそんな今だからこそ生き残るための手段としてSDGs経営に注目してもらいたい。
柱となるのは「教育」
実際に、SDGsに取り組むことは企業の業績向上につながるのだろうか。21年1月に行われた調査結果では、環境対策全般を行う「SDGs経営」を実践している企業と売上高との間には有意な相関関係が見られた(※注1)。
まず図❶はSDGs経営と収益の関係性を示したものだ。その結果、直近の20年と21年の比較だけではあるが、SDGs経営に取り組んでいる企業は翌年に増収となり、そうでない企業は減収になる傾向が見られた。増収グループはSDGs経営を重視し、具体策として環境CSR報告書の作成や環境配慮型商品の導入などに積極的に取り組んでいるようだ。
全体的な傾向を見ると、
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