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アジアに3~5年で500店出店めざす!フライングタイガー本国CEOにインタビュー!

北欧デンマーク発の値頃な雑貨店「フライング タイガー コペンハーゲン」(以下、フライングタイガー)は2012年に日本に上陸し、今年7月に10周年を迎えた。日本ではサザビーリーグとの合弁会社Zebra Japan(東京都/松山恭子CEO)が運営し、店舗数は35店に拡大した。世界では欧州を中心に27カ国858店舗を展開している(2021年度末)。本国・ゼブラ社のトップを務めるマーティン・イェアミーンCEOと松山恭子CEOに事業の現状と今後の戦略について聞いた。

聞き手=本誌編集長・阿部幸治 構成=西岡克(フリーランス)

1~6月は20%増、コロナ後に向け急回復

本国・ゼブラ社のマーティン・イェアミーンCEO(右)とゼブラ ジャパンの松山恭子CEO(左)

―ゼブラ社の2020年度の売上高は前期比34.8%減だったが、2021年度は同9.8%増の381200万デンマーククローネ(DKK、約694億円:1デンマーククローネ=18.2円で換算)と上向いた。現在のビジネス環境は。

イェアミーン 2021年に続き今上期(1~6月)は20%増で推移している。コロナ禍で厳しい時期もあったが、行動制限も緩和され、お客さまがかなり戻ってきた。客数はまだコロナ前には至らないが、客単価は上がってきた。

2021年度のEBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)は95000DKKと前期比で84000DKKも改善した。粗利益率も61.6%と直近で最も高く、コロナ前の19年度と比べても1%ポイント以上改善している。これらの要因は何か。

イェアミーン EBITDAの改善は当社の強みであるファンデザイン(ユニークなデザインの商品)とサステナビリティ(持続可能性)、そしてオペレーションに投資してきた結果だ。粗利益率の改善は在庫コントロール、すなわち適正在庫を持ち、売れる店に投入するという施策が奏功した。

―世界的なインフレが起こっている。商品の値上げなどへの影響は。

イェアミーン インフレの影響はないわけではないが、それ以上にオペレーションが改善してきた。付加価値の高い商品開発によって、インフレであっても粗利益が取れるビジネスモデルを築き上げている。

松山 日本も同様。「タイガーイッシュTigerish」と呼んでいるが、ユニークでフライングタイガーらしいデザインであるかを重視し、商品の付加価値を見極めている。付加価値が付いていれば他社の倍の価格でも負けないし、投入後に消化率が悪ければすぐに価格を変更する。定価や値上げという考え方はあまり持っていない。

今後3~5年でアジアに500店の出店が可能

小型店のアリオ亀有ストアでは本国の原則を覆してワンウェーコントロールをせず、複数の入り口から入店できる店舗設計を採用した

―フライングタイガーの基本展開モデルは。

イェアミーン グローバルの売場面積は150250㎡が標準。1㎡当たり10SKU(最小在庫管理単位)で設計している。展開時期によるが、150㎡の売場で1500SKUが適正だと考えている。

松山 日本の場合は物件によって異なるが80100坪(264330㎡)が基本。100坪の大型店なら20002500SKUになる。年間40005000の新商品が開発され、毎月200300の商品が投入される。

 78日に開店したアリオ亀有ストア(東京)は売場面積124㎡と小ぶりだが、小型店でも展開商品数は意識し、商品の表現をコントロールしている。

 日本上陸後初期の出店に関しては、150坪を超える店舗が多く、正直大き過ぎた。適正な坪数を模索し、現在は標準化ができてきた。最近はポップアップ(期間限定)などの形で小型店のトライアルもしている。昨年4月に開店したグランツリー武蔵小杉(川崎市)も約50坪。駅に近い立地ならこのサイズでも成立するのではないかと考えている。

―今後の世界での出店戦略は。

イェアミーン 現在世界で約900店を展開しているが、採算性やサービスレベルを担保しながらヘルシーな形で成長させていきたい。

 欧州以外では中東のアラブ首長国連邦(UAE)、イスラエル、サウジアラビアの3カ国に今年1月に進出したが、非常に好調。アジアでは日本や韓国以外にも出店するつもりでいる。ブランドのユニークさとサステナビリティへの取り組み、デンマークやフライングタイガーらしさが理解され、表現できることを前提に、今後35年間でアジアには500店を出店できるのではないかとみている。

―日本における出店戦略は。

松山 10年前に日本に進出し、ブーム期やその後の停滞期を経て変革期に入っている。ターゲットをファミリー層へと見直し、郊外モールへの出店を強化。適正規模で出店ができ、収益性も高まった。日本には出店エリアがまだたくさんある。小型店を地方都市に出していく可能性はある。出店精度を高めるため、まずはポップアップストアを開き、様子を見ている。まだ北海道にも出ていないし(丸井今井札幌本店でSHOP IN SHOPは展開中)、昨年は宮城県(3月イオンモール新利府)や石川県(7月イオンモール白山)に出店したが、大きな反響があった。

 

―現在、欧州22カ国でECビジネスを展開している。

イェアミーン フライングタイガーはSNS(交流サイト)と親和性があり、リアル店とECが両立するブランドだと思う。EC事業は始めたばかりだが、中には売上の15%を占めている国もある。

 日本では20206月にファッションサイトのSHOP LISTに開設し、好調に推移している。将来は自社ECも考えているが、2028月には、楽天市場にも出店した。まずはリアル店を増やすことだ。

日本独自の商品企画や追加生産体制も

―日本事業の進捗は。

松山 先に述べた通り、当初はブームになり、ブーム期をベースに出店モデルをつくってしまい、大型店を出し過ぎた。現在は客層をファミリー層に定め、注力商品カテゴリーを見直した。またコアなお客さまが形成するコミュニティ活動「部活」を始動し、ファン客とのつながりも築いてきた。過剰在庫も一掃。そのタイミングでコロナ禍に入ったので今は順調に推移している。

―日本におけるローカライズ(現地化)の取り組みは。

松山 昨年から始めた「リバイ」と呼ぶ再生産・再販売の仕組みがその一例。スマートフォンプロジェクター(税込990円)が大ヒットしたのを機に、何度も売れ筋を買い直して、もう一度売るというサイクルを日本独自でつくり上げた。リバイして投入し、メディアにもう一度取り上げてもらうと、お客さまが来店してもきちんと商品がそろっている。これがうまく循環して、実際に一品単価と客単価が上がった。

 この成功によって、昨年からはレギュラーなプロセスになり、今年から2カ月に1回実施。数としては年間400アイテム、1回当たり5060アイテムほどになっている。

―日本とグローバルでは売れ筋が違うのか。

松山 全く違うわけではないが、トップ商品など大きな品番では差が出る。特に食品は日本の輸入規制が厳しいので、日本独自で企画・生産するものも多く、欧米とは売れ筋が異なっている。