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小売業の顧客支持を示す、ブランドパワーとは何か?

ブランドパワー大

コロナ禍も3年目を迎え、ウィズコロナ、アフターコロナの世界が見えてきた。消費者の行動が変容するなか、店舗に求める価値も刻々と変わっている。同時に少子高齢化、人口減少により、小売業の競争は激化し、限られたパイの奪い合いがさらに激しさを増している。そうした難しい時代に、小売業が生き残るためには、「ショッパー(購買者)の支持を得る」「ショッパーが行きたい店をつくる」ことである。これは、一人でも多くのショッパーを自店のファンにすることであり、それはすなわち自社・自店のブランド力を強化することと同義となる。第4回となった「小売業ブランドパワーランキング」では、この観点から「ショッパーからみた小売業」を俯瞰し、自社、自店の実力を可視化したうえで、アフターコロナを勝ち抜く強い小売業、店をつくるための方策を提案する。同時に、前年と比べて大きくブランドパワーを伸ばした企業トップにインタビューを行い、その躍進の秘訣を尋ねた。

本特集は「ニールセン・ショッパートレンド調査」から抜粋したデータを用いた
「ニールセン・ショッパートレンド調査」調査概要
調査内容:ショッパーの購買行動を3部構成(①業態利用実態、②小売チェーンの評価、③ショッパーの習慣)により明らかにする。年1回実施
調査地域:日本全国47都道府県

調査対象者:18歳から65歳の食品日用品を購入するかその意思決定に関わる人 対象サンプル数:5142人(スーパーマーケット・総合スーパー編、コンビニエンスストア編)/2606人(ドラッグストア編)
調査期間:2021年12月
調査手法:インターネット調査(定量アンケート)

評価対象小売チェーン(各業態別50音順 ※:同グループ内複数チェーンをまとめて聴取):
スーパー計44チェーン】アピタ・ピアゴ(※)、イオン、イズミヤ、イトーヨーカドー、いなげや、エコス、オークワ、オーケー、カスミ、関西スーパー、紀ノ国屋、サミット、サンエー、サンリブ、山陽マルナカ、三和、成城石井、西友、ダイエー、東急ストア、ドン・キホーテ、原信・ナルス(※)、ハローズ、バロー、阪急オアシス、フジ、ベイシア、ベルク、平和堂、まいばすけっと、マックスバリュ、マミーマート、マルエツ、丸久・マルキョウ・マルミヤストア(※)、マルナカ、万代、ヤオコー、ゆめタウン・ゆめマート(※)、ヨークベニマル、ヨークマート、ラ・ムー・DIO・DIOマート(※)、ライフ、ラルズ・アークス・東光ストア(※)+コープ(店舗)
ドラッグストア計24チェーン】アインズ&トルペ、ウェルシア、クスリのアオキ、カワチ薬品、キリン堂、クリエイトエス・ディー、ゲンキー、ディスカウントドラッグコスモス、コクミン、ココカラファイン、ザグザグ、サツドラ、サンドラッグ、スギ薬局、ドラッグセイムス、ドラッグストアセキ、ダイコクドラッグ、ツルハドラッグ、トモズ、マツモトキヨシ、ドラッグストアモリ、薬王堂、ドラッグユタカ、Vドラッグ
コンビニ計5チェーン】セイコーマート、セブンイレブン、ファミリーマート、ミニストップ、ローソン

問い合わせ先:ニールセン・アイキュー・ジャパン コンシューマー・インサイト 担当:柳橋(E-mail:JPNCIwebmaster@nielseniq.com)

お客に選ばれるためのブランド力を測る!

 1人でも多くの顧客に選ばれるチェーンになるためには自店のブランド力を高めることが近道である。2021年も20年に引き続き、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言、まん延防止措置などの規制により、レジャーや外食などには行政による規制がかかる時期の多い一年であった。

 しかし、ワクチンの普及や規制緩和などにより、最近では少しずつ日常の生活を取り戻しつつある。半面、日常の買物行動においては「必要なものを最小時間で購入する」という意識が続いており、そうしたお客の買物動向がコロナ以降の“ニューノーマル”として定着し始めている傾向が見られる。そうした中で、1人でも多くの顧客に選ばれるチェーンになるための自店のブランド力をどう測ればよいのだろうか?

 そのブランド力を数値で可視化したものが、「ブランド力総合指標」である。ニールセンIQでは小売チェーンに特化したブランド力総合指標を「ストア・エクイティ・インデックス(SEI)」と呼んでいる。このSEIスコアはニールセンIQが長年世界60カ国以上で実施してきた「ニールセンIQ・ショッパートレンド調査」において、毎年計測しているものである。今までの計測実績からSEIスコアと小売企業のマーケットシェアには強い相関があることがわかっており、SEIスコアが高いほどマーケットシェアも高くなる。

 裏を返せば、マーケットシェアを高めるためには、SEIを上げることが最も効率的な方法の1つであるといえる。今後国内人口が減少するなかで、いかにマーケットシェアを高められるかが、企業の成長と存続のために欠かせない要素となってくる。

 SEIを高めるためには具体的にどうするべきか。まずはSEIの構成要素を理解し、そのうちの重要な項目をモニタリング、改善していくことが必要である。現状分析から優先順位の高い項目を選び、そこを重点的に改善することが効率的な方法となる。

SEIを上げるにはどうすればよいか

 では、SEIの構成要素を説明したい(図表❶参照)。SEIは、小売チェーンに対する個々の消費者の態度を基にスコアが定められる。具体的には、消費者が小売チェーンに対して、①ストアロイヤルティを感じ、②価格のプレミアム性に対する受容性が高く、③店舗立地の受容性が高い、ほどSEIスコアが高くなる。

 そしてこの「消費者の態度」に影響するのが、④ブランド認知、⑤購入検討のリストに入ること、⑥ブランドイメージ項目での評価といった「消費者の認識」となる。さらに⑥ブランドイメージの中でも、とくにSEIスコアへの貢献度の高い重要イメージ群は優先的に強化すべきポイントとなる。ゆえに、SEIを向上させるための具体的なアクションに落とし込む場合には、これら④⑤⑥の指標に着目し、自社の強み・弱みがあるかを探り、対応していくこととなる。ちなみに、SEIスコアは0~10の指標で表される。

 次項以降で掲載している各ブランドのスコアがそれだ。SEIスコアは3を超えると高いブランド力を有し、2を超えると中程度のブランドパワーであると考えてよい。その一方で、1を下回るとそのブランド力は弱い状態といえる。業態によっては全国だけでなく国内エリア別のSEIも掲載した。自社が強いエリアと弱いエリアを確認するのに役立ててほしい。

 今回、日本市場の調査は、食品スーパーと総合スーパー、ドラッグストア、コンビニエンスストアの3業態で、サンプル数5000人超(ドラッグストアは2606人)で実施した。調査時期は21年12月であり、新型コロナウイルスの感染者が一時的に減少し、緊急事態宣言やまん延防止措置がすべて解除された時期である。コロナ直前期の20年(19年12月実施)、コロナ真っ只中の21年(20年12月実施)との結果と比べてみると、アフターコロナの消費者の姿を知るためには適当なデータであると考える。

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