商業動態調査によれば、2021年の家電量販店売上高は対前年同期比2.3%減の4兆6866億円と、コロナ禍でのテレワーク、特別定額給付金による買い替え需要で伸長した20年(売上高4兆7927億円、5.1%増)を下回った。間もなく、2022年決算が発表になる。コロナ禍を経て、上場各社の戦略の違いが明らかになってきている。各社決算発表を待つ前に、21年決算での売上ランキングはどうなっていたのか、ここで振り返っておこう。
2021年決算は各社好調
2021年のランキングでは25社中19社が増収と、各社の業績は軒並み好調に推移。ただ、都市型立地の多い一部の企業では、インバウンド需要の激減などのマイナス影響をカバーすることができず、業績が落ち込んだ。
ランキング上位の顔ぶれと順位に大きな変化はなかった。トップはヤマダホールディングス(群馬県:以下、ヤマダHD)で、21年3月期の売上高は対前期比8.7%増の1兆7525億円と2位以下を大きく引き離している。20年10月に持ち株会社制に移行し、ヤマダ電機から商号変更したヤマダHDは、M&A(合併・買収)による拡大戦略に積極的で、22年5月には、連結子会社のヤマダデンキが、同じく連結子会社の大塚家具を吸収合併することが決まっている。
2位は大阪に本部を置くエディオン(大阪府)で、21年3月期の連結売上高は同4.7%増の7681億円の増収、当期純利益では2ケタの大幅増益を果たした。3位はヨドバシカメラ(東京都)で21年3月期の売上高は0.5%増の6894億円と微増収だが、強みとするECは2000億円規模にまで成長している。8位のノジマは顧客視点の接客が支持を得、2ケタ増収を果たした。
各社の業績がおおむね好調に推移した一方で、5位のビックカメラ(東京都)は大打撃を受けた。20年8月期の売上高は、同10.8%減の4605億円と2ケタの減収となり、当期損益では4億円の最終赤字を計上した。コロナ禍に伴う営業短縮や臨時休業のほか、都心部店舗での客数減少やインバウンドの激減が大きく響いた。
21位のラオックス(東京都)はインバウンド客対象に総合免税店事業を展開していたため、業績悪化が著しい。21年12月には中国・蘇寧電器が株主からはずれ、今後は、21年3月社長に就任した飯田新体制のもと、ギフト事業と、越境ECや貿易などを中心とした海外事業を2本柱とする事業モデルへの転換を図っていく。22年10月には持ち株会社体制へ移行し、ラオックスホールディングスに商号を変更する予定だ。
ヤマダHDは減収予想、どうなる2022年決算
家電量販店各社の2022年決算はどうなるか。業界トップのヤマダHDの22年決算は減収減益を予想しており、第3四半期累計の売上高は同7.0%減の1兆1927億円となっている。業界2番手のエディオンも第3四半期累計は売上高9.0%減の5288億円、通期予想でも6.9%減を見込む。
20年決算(8月期)で大きく売上を落としたビックカメラ(東京都)は、21年決算で大幅増益となったものの、売上高は4.4%減の4402億円と減収に沈んでいる。同グループのコジマ(東京都)は3.2%増の2975億円、ソフマップ(東京都)は4.6%減の405億円だった。そうした状況のなかで、グループEC売上高は8.9%増の1564億円となり、EC比率も20%(18.8%)近くまで伸長してきている。
その一方で、メーカー販売員を配さず、自社社員によるコンサルティングセールを強みとするノジマ(神奈川県)は21年に入り、都内23区への出店を積極化している。21年8月には東武百貨店池袋本店内に東武池袋店、同11月に高島屋タイムズスクエア店を出店。各社の2022年決算が厳しい着地になることが予想される中で、攻勢をかけている。