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人口減少時代、ネットスーパーの必然性が高まる理由と、新たな食品小売のビジネスモデルとは

ネットスーパー新時代

新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大を契機に、食品スーパー(SM)各社は新たな販路としてネットスーパー事業を拡大している。同時に加速しているのが小売業界のデジタル化だ。それは流通構造や業界のビジネスモデルそのものを変容させるものである。本稿では、業界に訪れると予測される大きな変化を挙げ、SM各社がネットスーパーを展開するうえでのヒントを提示する。

デジタルとリアルの事業者が同じ土俵に

 2020年の食品を含む物販のECは、コロナ禍における利用増により市場規模が12兆円(対前年比21.7%増)となり、EC化率は8.08%(同1.3ポイント増)に伸長した。一方で、食品の市場規模は2.2兆円で、同21.1%増加したものの、そのEC化率は3.3%と低くEC化の余地が大きい分野である。

ネットスーパーとは単に食品を配送するものではなく、デジタルによって顧客接点を新たに持ち、付加価値を提供する試みとなろう。 i-stock/milindri

 従来のSMは店舗を軸とする事業展開をしてきた。しかし、プラットフォーマーであるアマゾンジャパン(東京都)、楽天グループ(東京都)がネットスーパーの市場に参入し、デジタルとリアルの業界の垣根を越えた協業が広がりつつある。

 アマゾンジャパンはライフコーポレーション(大阪府)やバローホールディングス(岐阜県)と提携する一方、楽天グループは西友(東京都)の株式を取得し、ネットとリアル店舗の融合をめざすDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進すると発表した。そのほか、イオン(千葉県)は英国のネットスーパー専業のオカドグループ(Ocado Group)と国内の独占パートナーシップ契約を締結している。このように、デジタル側とリアル側の事業者が同じ土俵に乗ることで、既存のビジネスモデルが変容しつつある。

 また新たな動きとして20年、イトーヨーカ堂(東京都)が業界初と打ち出すネットスーパー専用アプリの提供を開始したことを皮切りに、各社でも専用アプリの新設が相次いだ。これにより、ユーザーごとに買物履歴やお薦め商品、お気に入りリストなどの提示が可能となり、消費者に新しい購買体験の提供ができるようになった。

 ネットスーパー市場の活発化によって都市部と地方では異なる動きが生まれている。人口密度が高い都市圏では、自動化設備を導入したネットスーパー向けの大型物流センターの開設が進んでいる。イトーヨーカ堂は23年春に神奈川県横浜市で、楽天グループと西友は22年初春に大阪府茨木市、23年上期までに千葉県松戸市に専用物流センターの稼働を予定している。これらの取り組みは、人手不足に備え、大型倉庫の導入による生産性向上を図るねらいもある。

 一方の地方圏では、地場の有力SMが中心となってネットスーパーを展開し、大手が商勢圏に入り込んでくる前に顧客を囲い込もうとしている。なかにはデジタル対応に不慣れな高齢者に向けて、まずは電話での注文受付から開始し、段階をおってネットスーパーの利用へとつなげている企業もある。このように、ネットスーパーとは単に食品を配送するものではなく、デジタルによって顧客接点を新たに持ち、付加価値を提供する試みとなろう。

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