コロナウイルスが世界中で猛威を振るい始めてから、気づけば2年近くが経過しようとしている。しかし国内では感染状況は落ち着きを取り戻しつつあり、アフターコロナの到来が現実味を帯びてきた。そのコロナ後の世界で、SM業界はどのように歩みを進めていくのか。ライフコーポレーション(大阪府:以下、ライフ)、ヤオコー(埼玉県)、サミット(東京都)の有力SM3社の展望をまとめた。
アフターコロナの世界をどう生きるか
振り返れば、2021年もコロナ一色の1年だった。より感染力の強い変異株「デルタ株」が日本国内でも猛威を振るったことで全国的に感染者数は激増。8月20日には、1日当たりの感染者数としては過去最多となる2万5990人の感染が明らかとなった。
しかし、10月以降は一転して感染状況は落ち着きを取り戻した。本稿執筆時点(12月下旬)では国内の新規感染者数は200人以下で推移しており、東京都内でも2ケタを維持。街では買物や飲食を楽しむ人々も増え、かつてのような光景が見られるようになった。ただし世界的には新たな変異株「オミクロン株」が拡大、欧州諸国の一部ではロックダウン(都市封鎖)が再発するなど予断を許さない状況ではある。
SM業界にフォーカスしてこの1年を振り返ると、業績は概して好調だったといえるだろう。コロナの感染状況が一進一退を繰り返すなか、内食需要は高止まりで推移、さらにネットスーパーの利用増なども寄与して、多くの企業が売上を安定的に確保した。
他方、国内では感染状況が落ち着き楽観ムードすら漂うなか、いわゆる“アフターコロナ”の到来がいよいよ現実味を帯びてきたともいえるだろう。そこでは、ボーダレスな競争の激化、人口減少・少子高齢化、原材料や物流費、人件費などの経営コストの高騰といった、従来の経営課題がさらに顕在化する可能性が高い。コロナ禍で見えづらくなっていたこれらの問題をいかに解決し、厳しい競争を勝ち抜いていくかが各社に問われている。
ライフ、ヤオコー、サミットが12月中に開催した年末恒例の社長会見でも、「来期(22年度)の経営環境は厳しくなる」という見方から、そうした環境下での戦略について言及する場面が目立った。
「新たな価値」を追求し続ける3社
会見で、「同質競争からの脱却」「質での競争」というフレーズを繰り返したのは、ライフの岩崎高治社長だ。コロナ後の世界でも競合相手や競争環境が大きく変わることはなく、自社の基本戦略である商品の品質やサービス向上によって、価格に偏重した同質競争から抜け出す、という考え方である。
その軸の1つが、プライベートブランド(PB)を中心に自然派・オーガニックの商品を扱う「BIO-RAL(ビオラル)」事業だ。今期(21年度)は近畿圏と首都圏の両方で計3店を開業、さらにPBとしての「ビオラル」商品についても既存店でコーナー展開するなど全社的に波及させている。同事業はコロナ禍での健康志向の高まりや、若年層を中心とした消費財に対してサステナブル(持続可能性)を重視する風潮などを追い風に支持を拡大。岩崎社長は「ビオラルだけで100億円の売上」を長期的な目標として言及しており、今後も同事業は経営戦略上、重要な地位を担いそうだ。
その一方、ヤオコーは経営基盤を拡大することでさらなる成長をめざす方針を鮮明にしている。21年8月にはディスカウント型新業態「フーコット」を埼玉県飯能市に開業して耳目を集めたほか、同年9月には千葉県のローカルSMチェーン、せんどうとの資本業務提携を発表。フーコットについては想定を超える客数で推移するなど手応えを得ており、今年3月には東京都昭島市に2号店を開業予定だ。
サミットは、ついにネットスーパーに参入することを発表。22年度中に一部店舗で実証実験を開始する予定で、服部哲也社長の言葉を借りれば、「“ サミットらしさ”のあるネットスーパー」の構築に向けて模索するという。
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3社に共通するのは、コロナ後の厳しい競争環境を見据えて、顧客に新たな価値を提供し続けようとすることにある。それが中長期的に自社のビジネスモデルや事業規模を進化させ、ボーダレスな競争における強力な武器になる、というわけだ。コロナ特需にただ沸くだけではなく、一歩先を見据えた戦略的投資が各社の将来像をどのように変化させるのか、注目したい。