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オイシックスが手がける、ひとり親世帯への食品支援 小売もメーカーも嬉しい「WeSupport Family」の取り組みとは

オイシックス・ラ・大地(東京都/髙島宏平社長:以下、オイシックス)ら3者が連携して、ひとり親世帯への食品支援事業「WeSupport Family」を12月15日からスタートさせた。食品の寄付に協力するのは、エスビー食品やカルビー等の18社。また、小売企業からはローソンが参加する。コロナ禍で経済的に困窮する家庭が増え、ひとり親世帯の貧困はもはや見過ごせない状況だ。オイシックスはこの社会課題をどう解決しようとしているのだろうか。

オイシックス・ラ・大地ら3社が連携して、ひとり親世帯への食品支援事業「WeSupport Family」を開始

現場を見て分かったひとり親世帯の貧困 WeSupportのスキームで課題解決目指す

 「WeSupport Family」は、オイシックス、一般社団法人RCF、オイシックス・ラ・大地、セイノーホールディングスグループのココネットの3者が立ち上げ、連携して運営する「WeSupport(高島宏平代表)が行う活動。20204月からスタートし、翌2111月に支援を終了した、医療従事者向けの食支援事業「WeSupport Medical」のスキームを受け継ぐ取り組みだ。同事業では、120社を超える食品関連企業から食料の寄付を受け付け、計124カ所の病院の約76万人に食料を届けた実績を残した。

 この成功体験から、WeSupportのプラットフォームを活用し「ひとり親世帯の食支援」を行うのがWe SupportFamilyである

 同事業を担当するオイシックスのコーポレートコミュニケーション部、大熊拓夢部長は、コロナ禍におけるひとり親世帯の経済的苦境を見聞きしていた。各地域の福祉協議会やそこで開かれるフードパントリー(食料を無料で提供するイベントのこと)を現地調査し、「なんとかしなければならない」と、危機感を強めていた。

「ある地域のフードパントリーでは、食料に限りがあるため、受け取れる人数を50人に制限したところ、それを大幅に上回る数の方が応募し、打ち切らざるを得なくなっていた。お母さんが子どもに食べさせるために自分は一日一食で我慢している、という話も直接聞いていた」(オイシックス・大熊氏)

 食料を提供するNPO法人らとコミュニケーションを取る中で、大熊氏が気づいたのは、「配布される食料の『絶対数』が足りない」という事実だった。だが、WeSupport Medical事業での経験から、多くの食品メーカーが寄付したい、という強いモチベーションを持っていることは明らかだった。WeSupport のスキームでは、支援する側とされる側のマッチングを行い、配送のための大きな倉庫で一度に大量の商品を受け入れているので、各メーカーの負担も軽減される。

「『寄付をしたいけど、どうすれば良いか分からない』と感じているメーカー様の窓口に私たちがなることで、結果的に一人親世帯に届ける食料が増えるのでは、と考えた」(同)

 2021年7月頃から食料品メーカーに声をかけ始めると、どの企業も好反応を示したという。中でもローソン(東京都/竹増貞信社長)は、「当社では、20196月から食品ロスに該当する商品を、子どもの貧困を解決する団体に寄贈している。WeSupport のスキームは大量の商品を受け入れてくれるので、こちらも商品提案をしやすい」と同事業に賛同する。

2000世帯のひとり親を支援 「ゆくゆくは生鮮食品も届けたい」

 2021年12月15日現在、18社から商品の寄贈を受け、東京と埼玉を中心に6団体、約2000世帯に食品を届けるWeSupport Family。今のところ、食品は缶詰やレトルト食品など、常温で日持ちするものに限定しているが、生鮮食品の購入をサポートする仕組みを構想中だ。

「海外で、同様の事業を行う団体のスキームも参考にしたが、寄贈される食品の栄養バランスに偏りがあり、肥満や生活習慣病など別の問題も発生していることを知った。栄養面を考えても、生鮮食品を送るのがベストだと考えている」(同)

 オイシックスではさらに、WeSupport に協賛するスーパーマーケットやECサイトが、ひとり親世帯向けに割引クーポンを発行する、というスキームも考えている。ローソンも「要冷商品の寄贈実現に期待する」とコメントを寄せており、期待値は高まっている。12月に始めたばかりの同事業だが、既に協賛企業からは福祉協議会を紹介されるなど、企業側の関心も非常に高い。

 「(寄贈商品は)常温で日常的に食べることができ、栄養バランスも良いものと制限があるので、ぜひ様々なメーカー様とお話をさせていただきたい」(同)

支援活動は「継続性」がKPI 認知広めることで支援受けやすく

 WeSupport Familyの今後について、大熊氏は「純粋なビジネスではないので、主要なKPIはない。あるとすれば継続性。この問題を解決するためには、一度食品を配ったら終わりではなく、受け取る方々が貧困から抜け出すことができるまで支援を続けることが大切」だと話す。

 同事業の広報活動にも力を入れていく予定だ。「ひとり親世帯の方々にお話を伺うと、食品支援そのものの存在を知らなかったり、『自分たちが無料で受け取っていいのだろうか、もっと困っている人がいるのではないか』と心理的な壁をつくったりしている方々もいる。私たちの活動が広がることで、世間の認知も高まり、支援を受けやすくなれば」(同)

 「食に関する社会課題を、ビジネスの手法で解決する」を企業理念に掲げるオイシックス。「サステナブルリテール(持続可能型小売業)」を目指し、ふぞろい品の積極活用、家庭での食品廃棄が削減できるミールキット販売などを通してフードロスゼロに取り組んできた。

 WeSupport Familyは、食品メーカーから大量の寄贈を受けることで、フードロスに加えて、「ひとり親世帯の貧困」という社会課題の解決を目指す。複数の企業や地域のNPOなどのステークホルダーを巻き込みながら、民間企業ならではのスピード感で、ひとり親世帯の食卓を支える。今後、取り組みに賛同する各地のスーパーマーケットとの連携や協力も積極的に進めていきたい考えだ。

 

■WeSupport Family「サポート企業」一覧
(2021年12月15日現在、18社のうち公表可能な企業のみ掲載)
<食品企業>
井筒まい泉株式会社、有限会社エコライス新潟、エスビー食品株式会社、株式会社エムエスディ、カルビー株式会社、株式会社コイル、ダノンジャパン株式会社、ネスレ日本株式会社、株式会社はくばく、ハルナプロデュース株式会社、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社、株式会社米匠庵、マース ジャパン リミテッド、森永製菓株式会社、株式会社龍角散
<小売企業>
株式会社ローソン