AOKIホールディングス(神奈川県/青木彰宏社長)傘下の事業会社、AOKI(神奈川県)の清水彰社長が会見し、所見を語った。
AOKIは、ファッション事業を担う中核企業。これまでロードサイドのチェーンストア展開で発展してきたが、近年は都心出店をスタートさせ、トータル・コーディネート訴求で成長を続けている。
2014年9月30日現在、「AOKI」を530店舗、「ORIHICA」(オリヒカ)を136店舗展開。ファッション事業の売上高は、1794億4300万円(対前期比11.7%増)、営業利益は141億3000万円(同18.1%増)と好調に推移する(数字は2014年3月期)。
AOKIは、2014年3月期の消費傾向を既存店舗売上高実績と性年代別と品種の切り口で分析。今後の伸びしろとしてさらに強化していく3分野と1つの大きな課題を抽出した。
伸びしろは以下の3分野だ。
① 50代以上の男性に向けたジャケット・スラックスのセットアップスタイルの提案
比較的コーディネートが苦手と言われている世代に対して、《選びやすさ》を主眼にコーディネートをビジュアルでプレゼンテーションする
② 30~40代に向けたスリムなジャケットをキーアイテムとするジャケット&パンツ(ジャケパン)スタイルの提案
クールビズの浸透による軽装化は、スーツ以外のビジネススタイルの幅を拡大。しわになりにくく、着回しができるジャケットを強化する
③ レディスの強化
リクルート・新卒入のフレッシャーズに向けたスーツマーケット以外にキャリア客層のスーツとフォーマルを見込む。人気雑誌とのコラボレーションによるファッション提案が効果的と判断、媒体活用方法も含め拡大する
一方、同社は大きな課題として20~30代のメンズスーツを挙げた。
AOKIの調査では、メンズスーツの着用頻度は、過去10年にわたって減少トレンドにある。大きな要因としては、働く環境が多様化していることにあるが、理由はそれだけではない。
スーツの満足度を調べていくうちに見えてきたのは、デザイン性の不満以外に、動きやすさや着心地、重さ、窮屈感などに対する不満だった。この傾向は、年代が下がるにつれてより鮮明になっている。
AOKIは、その解決策のひとつとして、信州大学との産学共同で新商品を開発した。
商品名は「ビシッとふわり羽織るスーツ」。今後、アオキは、「ビシッとふわり羽織るスーツ」をスーツ在庫の40%を占める主軸商品にする。
「ここには、AOKIだけの3つの技術が生かされている」と胸を張るのは清水社長だ。
ひとつめは、究極に着やすい型紙(パターン)を開発する技術。2つめは、肩パッドなどの芯地が軽く、ソフトなものにしながらスーツ然とした外観を保つ縫製技術。3つめは製品化に当たり、型崩れや耐久性などを厳しく検査する品質管理技術である。
同社の技術を結集することで完成に至った「ビシットふわり羽織るスーツ」は衣服圧力を従来のスーツに比べて最大24.6%も軽減することに成功。「『スーツ』の堅苦しく窮屈という過去の概念を打ち破り、新しい未来のスーツを切り開くと確信する」(清水社長)。
AOKIは、3つの伸びしろをさらに引き上げつつ、「新商品開発」により課題解決を図っていく。
また、AOKIは、「コミュニケーション戦略の刷新」にも着手した。
従来の同社の販売促進手法は、チラシとダイレクトメールに依存するところが大きかった。これに加え、TVCFによる幅広い情報提供とWEB系メディアでの媒体構築に乗り出す。
「ビシットふわり羽織るスーツ」の発売に当たっては、ディー・エル・イー(東京都/椎木隆太社長)の「秘密結社 鷹の爪」とのコラボレーション企画で広報活動に当たる。
さらに、「営業力の磨き上げ」を図っていく。
AOKIは、接客を究極のパーソナルコミュニケーションと位置づけ、接客技術の向上を目的に、ファッションに関する専門知識と提案力を身につけた独自のスタイリストを育成。お客に合わせたスタイリングサポートを行っている。
その甲斐あって、日本生産性本部による「顧客満足度調査」では2年連続でナンバーワンを獲得した。
同社のスタイリスト制度は時代に合わせて改定しながら進化させ、今回、AOKIのスローガンを「あなたのスタイリスト」と改めた。
清水社長は、「AOKIのブランド価値を高め、社会性のある企業として発展にまい進したい」と抱負を述べた