20年以上前に講演を依頼されたのを皮切りに、大勢の人の前で話すことが当たり前になった。
以前は、自信のなさや本業の忙しさもあって、講演は極力断るようにしていた。
だが、今の職(『チェーンストアエイジ』誌の編集長)に就いてからは、講演が主要業務のひとつになっているようなところもあり、断る理由がなくなった。
その結果、年間では10本以上をお引き受けするようになっている。
講演というのは、回数を重ねれば重ねるほど、うまくなっていくものだ。
初めて登壇した時には、心臓が口から飛び出しそうになるほど緊張したものだが、今やどんな場面に遭遇しても、真っ白になってしまうことはなく、どうにかなんとかなってしまう。
「パワーポイント」というプレゼンテーション用の武器を手にしたことも大きい。下準備には手間取るが、書かれている流れに沿って説明していけば、本題から外れることはまずない。
その意味では、人前に何度も立たせていただくことで、緊張から解放される方法を体得してきたような気がする。
ところが、最近は、少し違う考え方が芽生えてきた。
緊張を緩和することや回避することは、必ずしも自分のレベル・スキルアップにはつながっていないのでは、という疑問だ。
確かに緊張の緩和や回避は悪いことではないのだが、ややもすると慣れとなり、中身のブラッシュアップはもちろん、今以上に伝わる話術やプレゼンテーション術の習得は難しくなっている。
そう考えると、緊張も決して悪いことではなく、そこから生まれる何かが必ずあるはずだ。
受講者を前にしどろもどろになってしまうことは避けたいけれども、もう少し自分にプレッシャーをかけ、緊張しながら、講演する方法に切り替えたい。