京都・四条大宮は、魅力あるエリアだ。歴史的な見どころが多いほか、夜の飲み歩きもできる。さらにインバウンド客が少ないという穴場的な一面も、地元民を強く引きつける理由である。今回は、そんな四条大宮をあちこち巡った後、老舗の中華そば店で名物メニューを食べるというお話しである。
※価格はすべて税込、取材当時のもの

かつて新選組が闊歩した街を散策!
一般的に京都で人気の観光地といえば、伏見稲荷大社、金閣寺、嵐山、祇園を連想する人は多いだろう。延々と続く朱色の鳥居、荘厳な金色の建物など、いずれも写真に収めたい名所が存在し、「京都へ行ってきた」という満足感を得やすいのが特徴だ。
しかし、京都には他にも魅力的な場所が数多くある。そのひとつが四条大宮だ。歴史好きにとって飽きることのない史跡が点在し、食事や酒を楽しめる店も豊富にそろっている。
近年、京都市中心部はどこに行っても訪日外国人観光客でごった返しており、日本人の観光客が減少傾向にある報道も耳にする。そうしたなか、都心部にほど近い場所でありながら、ゆっくりと過ごせるのが四条大宮の魅力といえるだろう。
その四条大宮で、歴史ファンに訪れてほしいのが壬生(みぶ)寺。正暦2年(991年)に創建された由緒ある寺院だが、幕末には新選組が境内で大砲や剣術、馬術の訓練をした場所として知られている。
四条大宮の北側一帯は、1200年以上前の平安時代には平安宮があった場所である。阪急電鉄京都本線「大宮」駅前の交差点から北西へと延びる後院(こういん)通を進むと、やがて千本通に合流する。現在の千本通は、かつての平安京のメインストリートであった朱雀大路の跡にあたる。
はるか昔に思いを馳せつつ京都の町を歩けばまるでタイムマシンで過去にさかのぼるような感覚になる。歴史好きにとってこれほど心躍る時間はないだろう。
四条大宮はあの名店の発祥地?
四条大宮といえばもう1点、決して忘れてはならないことがある。それは全国展開する人気中華料理チェーン「餃子の王将」が、この四条大宮で創業したということだ。1号店は現在も営業を続けており、建物の一角には「餃子の王将発祥の地」との記念プレートが設置されている。王将ファンにとっては聖地ともいえる場所だ。
さて今回の行き先は、王将1号店の北隣にある「中華そば 京一本店」(京都府京都市)である。店舗入口の横には、食品サンプルがずらりと並ぶレトロなショーケースが設置されており、独特の雰囲気を醸し出している。
ここへ来るのは数年ぶりだ。私は高鳴る胸の鼓動を抑えながら暖簾をそっとくぐった。
京一本店の意外な名物とは…
「中華そば京一本店」の創業は1948年(昭和23年)。王将1号店がオープンした1967年(昭和42年)の20年近くも前から同地で営業している。
私が店に到着したのは午後12時半。昼食時ということもあり、店内はほぼ満席だったものの、運よくすぐに座ることができた。さっそくメニューを手に取ったが、実は入店前から決めていた一品がある。それはこの店の名物「カレー中華」だ。久しぶりの訪問ということもあり、「うどん・そば各種に+180円でセット可能」という「かやくご飯」も一緒に注文した。
店内を観察すると老若男女、幅広いお客が食事をしている。観光客というよりも、地元民の比率が高い印象を受ける。京都は和食のイメージが強いだけに、あえてカレー中華を求める層を考えると、この顧客構成も納得できる。
待つこと約10分、いよいよその一品が運ばれてきた。
どうです、おいしそうでしょう。食欲を刺激しまくるルックスだ。
以前は、麺の上にカレーがただ載せられているだけの印象だったが、最近はネギや牛肉が後から盛り付けられるようになり、見た目が格段によくなっていた。経営者の家族と見られる女性に質問したところ、「写真映え」を意識し、数年前に盛りつけを変更したらしい。確かに、現在の盛り付けの方が多くの人の心をつかみそうである。
さて、割り箸を取り、麺をつかんで持ち上げる。
カレーがしっかりと麺に絡んでおり、その重みに驚かされる。少し冷ましてから麺をすすると、口の中に濃厚なカレーの風味が広がった。うん、おいしい!
京都の料理はあっさりとした味わいと言われるが、このカレー中華はけっこう濃い。甘みをベースとしながらも、後からくるスパイシーさが絶妙なバランスを生み出している。これは、セットで頼んだかやくご飯が進むというものだ。どんどん食べ進め、辛いのであっという間ではなかったがすぐに完食。ごちそうさまでした。
みなさんも京都へ来る機会があれば、四条大宮、そして「中華そば京一本店」に立ち寄ってみてはどうだろうか。