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京都・寺町、明治時代創業の老舗飲食店で味わう人気メニュー「田舎そば」

京都は歴史が身近な街だ。少し歩くだけで教科書に載っている人物の足跡、できごとが起こった現場に出会える。ここ寺町通も例外ではない。地名は、かの豊臣秀吉の都市大改造事業に由来し、今も多くの人が訪れる名所として知られる。今回は、その寺町にある老舗飲食店で名物メニューを食べるというお話である。

来るといつもこのメニューを注文する
来るといつもこのメニューを注文する

1200年もの長い歴史が息づく京都・寺町

 日本国内のみならず、京都には今や世界中から観光客がやってくる。道を聞かれる機会も珍しくなく、お国を聞くと「へぇ、そんなところから!」と驚くことが多い。最近ではアルゼンチン、サウジアラビア、モンゴル、メキシコからやってきた人と話をした。

 人が集まるのは、長い歴史があるからだ。あらためて振り返ると、桓武天皇が794年に遷都したのが平安京の始まり。以来1230年超の時が流れている。

 歴史があるだけに少し歩くだけでも、教科書に載っている人物の足跡、できごとを起こった現場に出会える。

烏丸エリアにある「本居宣長先生修学之地」と記された石碑

 たとえば私の仕事場がある京都市中心部の烏丸エリア。金融機関や企業のオフィスが集中するビジネス街だが、その一角にある石碑が「本居宣長先生修学之地」である。

 本居宣長といえば、国学研究の大家で「古事記伝」を著したことで知られる。前を通るたび、宣長が250年以上前、このあたりをうろうろしていた姿を想像して楽しんでいる。

河原町エリアにある「坂本龍馬 中岡慎太郎 遭難之地」

 また繁華街の四条河原町交差点を北へ進んだ西側にあるのが「坂本龍馬 中岡慎太郎 遭難之地」という石碑。坂本と中岡は慶応3年(1867年)に起こった近江屋事件で暗殺されたが、まさにその跡地がここ。今はカラオケ店になっているが、160年近く前に歴史的事件が起こった場所だと思うとなかなかの迫力がある。

 河原町からも近いのが、今回の行き先である寺町エリア。地名は、豊臣秀吉が京都の都市大改造を行ったことに由来する。

 寺町京極商店街の公式サイトには、「応仁の乱で荒廃したこの通りを再興したのは豊臣秀吉、天正18年(1590)のことです。秀吉はここに寺院を集め、通りの名も『寺町通り』と改め、一大寺院街を造営しました」とある。

豊臣秀吉が整備した寺町のアーケードが整備された商店街はどこも繁盛している

 現在は外国人観光客も多く歩き、アーケードが整備された商店街はどこも繁盛している。土産物店だけでなく、数珠や陶器を売っている店に入り、品定めしている姿をよく目にする。彼らの目には京都の文化が興味深く映っているに違いない。

四条寺町の交差点から南すぐの場所にある「永正亭」

 その寺町にある飲食店が今回の目的地。四条寺町の交差点から南へ数10メートル歩いたところにある「永正亭」である。では入ってみよう。

 

地元民に愛される老舗「永正亭」の「田舎そば」

 私がこの店に来るのは大抵が昼時で、暖簾をくぐると十中八九、数人が並んでいる。利用しているのは観光客というよりも、半数以上が地元民との印象。食事を済ませるとすぐに店を出る人がほとんどだから、回転がはやくすぐに座ることができる。この日も、ほんの数分待つだけで従業員のお姉さんに案内された。

店内は横幅が狭く、奥に長い。京都の典型的な「うなぎの寝床」

 店は横幅が狭い一方、奥に長い、京都ならではの典型的な「うなぎの寝床」の形状。私は一番奥、厨房の手前の席に座った。すぐにメニューを手にとり、何を食べるかを検討し始めた。

メニューを見ると、どれもリーズナブルだ

 毎回思うが、このお店、ものすごくリーズナブルなのだ。「生そば450円」、「あんかけ470円」「ざるそば570円」など、値上げが相次ぐ時代にあっては、そのありがたさが光り輝きまくっている。

 最終的に選んだのは人気の「特田舎そば 天ぷら入830円」である。選んだと書いたが、実は、悩みに悩んだ挙句、大抵これに落ち着く。毎回、新しいメニューにチャレンジしようと思いつつ、踏み切れない。いつか自分の背中を押してあげたいと思って早何年。なお一緒に来た知人は「カレーうどん620円」を注文した。

私が注文した「特田舎そば 天ぷら入830円」

 78分が経過し、私の目の前に置かれたのがこれ。どうです、おいしそうでしょう。テーブルにある割り箸を手に取り、麺を少しつかんで口へ運ぶ。うん、おいしい。何ともいえない優しい味が口いっぱいに広がる。続いてえびの天ぷら。さくさくした衣の食感が最高である。どんどん食べ進み、そして完食、大満足である。

 知人が注文したカレーうどんの写真もアップしておく。店内を見回すと、これを頼んでいる人も多く、隣席の若い女性も食べていたことをお伝えしておく。

知人が頼んだ「カレーうどん620円」。これを頼んでいる人もかなり多い

 なおこの永正亭、ネットで調べると創業は明治23年(1890年)との情報が結構出てくる。店の公式サイトがないため、真偽のほどはわからないが、かなりの老舗なのだろう。明治23年に起こったできごとを調べると、第1次山県有朋内閣の下で、第1回帝国議会が召集された年とある。

 京都の街を散歩し、歴史に触れた後にここで食事をするのも味わい深い体験だと思う。

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