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長野・塩尻のアットホームな定食屋で、ワイルドな郷土料理「山賊焼」をいただく

仕事で各地へ行くと、時間を見つけて郷土料理やご当地グルメを調べるのだが、やはりその土地でしか味わえないものには惹かれてしまう。今回は長野県塩尻市を訪れ、現地で親しまれているという「山賊焼」を食べるというお話だ。同市はワインの産地としても有名で、面白いスポットもあるという。では早速、行ってみよう。

今回は長野県塩尻市で郷土料理を食べるというお話だ

駅のホームにある意外な場所

 長野県と聞いてまずイメージするのはリンゴ。また全国に8県ある「海なし県」のひとつであり、3000m級の山が並ぶほか美しい水など、自然に恵まれた環境ならではの料理が豊富で食文化も独特だ。そば、わさび、野沢菜はじめ、少し考えるだけで、おいしい食べ物が次々と思い浮かんでくる。

 今回、訪れたのは長野県の塩尻市。同県中部から西を指す中信地方に位置している。「塩尻」という地名の由来を調べると諸説あるらしい。塩尻市の公式Webサイトには、海から塩を運んでいた「塩の道」が、現在の塩尻あたりで終わっていたからとあった。歴史がわかると俄然、その土地に興味がわいてくる。

「塩尻 」駅で下車。自然が豊富な長野県にはおいしい食材、料理がたくさんある。楽しみだ

 電車内であれこれ検索しているうちにJR「塩尻」駅に到着する。すぐに行きたい場所をめざしたいところだが、駅構内にも面白い場所があるという情報を事前につかんでおり、まずは確認する。

 向かったのは3、4番ホームである。塩尻市はぶどうの産地としても有名で、駅内には斬新な発想の演出が施されているという。階段を下り、ホームの一番端っこで見た光景がこれである。何と、ぶどう園だ!

駅の3、4番ホームにあるのは……
「日本で唯一 ホームのぶどう園」。実際に見るとその意外な光景に圧倒された

 入口の上方に目をやると「日本で唯一 ホームのぶどう園」と記された看板が掛かっている。字面だけを見ても相当なインパクトがある。中を歩くと所々にベンチが置かれている。カップルが座り、愛を語り合うなんてこともあるのだろうか。

 私が足を運んだのは寒い時期で、あるのは葉っぱだけだった。8月下旬から9月中旬のシーズンにはぶどうがぶら下がる。塩尻市観光協会のWebサイトには「JR塩尻駅ホームぶどう棚の収穫祭」を開催したとあったので、イベントにも力を入れているようだ。

 ぶどう園を満喫した私は改札口を出た。駅前には木製のワイン樽、さらにワインの看板が見える。街全体でワインを打ち出しているのがわかる。

駅前には木製のワイン樽が置かれている。塩尻市はワイナリーが盛んなのだ

 もう少し周辺を探索したい気持ちを抑え、目的地へ急ぐ。駅から徒歩8分ほど、静かな住宅地の一角にお目当ての「正和食堂」はあった。ゆらりゆらりと揺れる暖簾をくぐり、私は店内へ入った。

駅から徒歩8分、住宅地の一角にお目当ての「正和食堂」はあった

「山賊定食」を注文

 素朴なつくりの店内は、カウンターと座敷席が設けられている。カウンターは満席だったので、お座敷の方に陣取った。
 
 この店の名物は「山賊焼」。塩尻市やお隣の松本市を中心とする中信地方で食べられている郷土料理である。山賊という文字からもワイルドな感じがして、ぜひ食べてみたいと興味を持った。 

注文前に、解説書を読んで山賊焼について予習する

 テーブルの上に置かれている保護ケース入りの解説には料理の説明が書かれていた。読むと「大きな鶏モモ肉に自家製のタレをたっぷりとつけ 片栗粉をまぶしてカラッと揚げています。当店では骨付きの鶏モモ肉を調理しています」とあった。シンプルな調理法なんだな。

 続いて「お品書き」を見て、迷った挙句に「山賊定食(大)1500円」を注文。従業員の女性によれば、「中」はもも肉の唐揚げで、「大」になるとそこに胸肉の唐揚げがついてくるとのことだった。

悩んだ挙句、「山賊定食(大)1500円」に決めた

 料理が来る間、店内を観察していると、お客は皆、地元の方のようである。若い女性は親戚の話題とか、最近あったことなんかを店員の女性と話している。年齢層は20代もいれば、70代と思われる年配者もいる。幅広い年齢層に愛されている料理のようだ。

 しばらくして私の目の前に届けられたのがこれ。メーン料理のほか、漬物、豆腐、味噌汁、ごはんがついている。完璧なルックスの定食である。

安定感のある完璧なルックスの定食

 まずは胸肉から。小皿に盛られた塩、マスタードを少々つけ、口へ。うん、おいしい。京都の味付けに慣れている舌には、そこそこ濃いが、それだけごはんが進むというものだ。続いて、銀のアルミホイルで巻かれている骨付きのもも肉へ。胸肉よりも少しこってりしており、これもまた美味。その後、どんどん白米を食べすすめ、完食した。

胸肉からいただく。うん、おいしい

 いい時間だったと後ろに手をつき、天井を仰いだ。もう満腹である。

 お勘定の際、思い切ってカウンターの方々に話しかけてみた。意外だったのは、皆さん、フレンドリーだったこと。年配の男性方からは「おいしかったですか」と料理の感想を求められた。こんなアットホームな雰囲気の店なら、また来てみたいと思いながら店を後にした。

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