冬に旬を迎える野菜には、寒さに耐えるための特別な性質が備わっており、それが甘みや栄養価の高さを引き出しています。本稿では、野菜ソムリエの梅田みどり氏が冬野菜の特性や目利きのポイント、簡単に試せる調理法を紹介し、冬野菜の魅力を深掘りします。

「ちぢみほうれん草」は一般的なほうれん草より
栄養価が高い?
冬野菜が甘くなる理由は「低温順化」現象にあります。野菜は寒さに適応するため、細胞内に糖分などを蓄積し、凍りにくくします。低温下では、成長が抑えられ、糖分が野菜内に貯まります。さらに、寒さによって根が土からの水分を吸収しづらくなるため、野菜全体の成分が凝縮され、味が濃く、甘みが強くなるのです。
その違いがはっきりわかる野菜の一つがほうれん草です。冬のほうれん草は、ほかの季節と比べて葉の色が濃く、甘さが際立ちます。選ぶ際には、茎と葉がみずみずしく張りがあり、濃い緑色を基準にするといいでしょう。根元のピンク色は、ビーツなどに含まれる植物色素と同じ抗酸化成分を持つポリフェノールの一種の「ベタレイン」によるものです。栄養価が高いため、捨てずに食べるといいでしょう。
ほうれん草の中でもとくにおすすめなのが、冬に出回る「ちぢみほうれん草」です。この品種は寒締め栽培によって、甘さと旨味が濃縮されています。寒締め栽培とは、暖房を使用せず寒い環境下のハウス内で栽培され、出荷の5日前から夜間にハウスの窓を開放して冷たい外気を取り入れる栽培手法のこと。昼夜の寒暖差が大きいほど糖度が高まり、ビタミンCやβカロテンなどの栄養成分も豊富に含まれるようになります。一般的なほうれん草の糖度は5度前後なのに対し、「ちぢみほうれん草」の糖度は10度前後に達します。
この品種は厚く縮れた葉と太い茎が特徴で、縦に伸びずに地面を這うように横に成長し、一般的なほうれん草とは少し形状が異なります。甘みが強くえぐみが少ないので、オリーブオイルでさっと炒めて塩を振るだけでも簡単に楽しめます。根本から1枚ずつ葉を取って洗い、切らずにそのまま強火で炒めてください。全体のかさが半分くらいに減ったら食べ頃です。
白菜、大根、ネギ、ブロッコリー
それぞれの選び方と調理法
ほうれん草のほかにも、白菜、大根、ネギ、ブロッコリーなど、寒さを受け糖度が増すことで、おいしくなる冬野菜があります。ここからは、それぞれの冬野菜の目利きポイントとおいしさを引き出す簡単な調理法をお伝えします。
①白菜
白菜は、葉がぎっしりと詰まっていて、全体的に重たいものが新鮮です。売場では1/2や1/4にカットして売られているものが多いので、中心の葉がふっくらしていて、切り口が乾燥していないものを選びましょう。
新鮮な白菜は、葉の部分をちぎって生野菜サラダにするとレタスに負けないおいしさを楽しめます。みかんやりんごなどの果物や、くるみやアーモンドなどのナッツを組み合わせると、さらに香りや食感が引き立ちます。
②大根
大根は、皮の表面に張りがあり、なめらかで傷が少ないものが新鮮です。先端から乾燥が始まるので、葉付きの場合は、葉が鮮やかな緑色で引き締まったものを選びましょう。
大根には、デンプンやタンパク質、脂肪を分解し消化しやすくするさまざまな消化酵素が含まれています。加熱すると消化酵素が失われるため、生で食べる大根おろしや大根サラダなどを副菜に組み合わせて取り入れるのがおすすめです。
③ネギ
ネギは、白い部分にツヤがあり、緑の部分が鮮やかなものを選びましょう。全体に張りがあり、まっすぐで硬さがあるものが新鮮です。
冬場のネギは寒さにより糖分が増加し、葉の内側にぬめりのあるゼリー状の物質が蓄積されます。この独特のぬめりを生かすには、表面を強く焼いて中を蒸し焼きのような状態に仕上げるのがポイントです。ぶつ切りにしたネギを表面に焼き色がつく程度まで焼き、生醤油をたらすだけでネギの甘さを引き出せます。
④ブロッコリー
ブロッコリーは収穫してからも成長するので、蕾が硬く詰まっていて濃い緑色をしているものを選びましょう。茎が太くてみずみずしいものが新鮮です。
2~3月のブロッコリーは最も味が良くなり、栄養価も高くなります。ほかの季節に比べて柔らかく火が通りやすいので、加熱時間を少し短くします。小房に分けてから、水につけて汚れを流し、茹で時間は1分から1分30秒が目安です。少し食感のあるブロッコリーは、噛むことでさらに甘みを強く味わえます。また、電子レンジ(500W)で2〜3分を目安に加熱すれば、栄養の損失を抑えることができます。
冬野菜は、この時期にしか味わえない特別な甘さや栄養が詰まっています。それぞれの野菜の特徴を知り、野菜売場での選び方から食卓での楽しみ方まで、より充実した冬の食生活に生かしてください。