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5打席連続敬遠がよかった

 東京読売巨人軍やニューヨーク ヤンキースで活躍、2012年末に引退し、今年5月に晴れて国民栄誉賞を受章した松井秀喜さんがTVのインタビューに答えて興味深いことを語っていた。

 

 高校時代は、20年に1人の逸材のスラッガーとしてその名を轟かせていた松井さん。彼を一躍、全国区の有名人にしたのは、星稜高校(石川県)3年生の時に出場した1992年夏の甲子園大会だ。

 2回戦の明徳義塾高校(高知県)との対戦で5打席連続敬遠という前代未聞の事態の主役としてクローズアップされた。

 敗戦を喫した松井さんは、試合後のインタビューを涙ながらに答え、勝負してもらえなかった悔しさをにじませていた。

 

 ところが、先のTVインタビューでは、「あれがよかった」と振り返っている。

 

 その理由として挙げていたのは2点だ。

 

 ひとつには、5打席も連続で敬遠されたから、本塁打を量産するよりもプロ野球球団やマスコミが自分を高く評価してくれたこと。

 ふたつには、入団後に結果を残せず、「大した選手じゃなかった。勝負しておけばよかった」と思われるのが癪だから、一生懸命練習したことだ。

 

 渦中の当事者でいるときは、どうしても視野狭窄になり、事態を悲観的にとらえてしまいがちなのは誰もが同じだ。

 

 ただそれでも、そのきつい場面の中で、何とか視点を変えてみたり、長期的な時間軸で考えてみたい。

 そうすれば、物事の見え方は一変することを松井さんの回顧は教えてくれる。