「フォーマル」、「カジュアル」、「ビジネス」、「スポーツ」…。
衣料品の分類とは、実に身勝手だ。
プロダクトアウトの発想がいまだにはびこっており、製造者発信であらかじめ用途を区分してしまっているからだ。
本来は、カジュアルのビジネス使用やスポーツのフォーマル使用、フォーマルのカジュアル使用といったことだってあっていいはずであり、製造者に用途まで押し付けられる筋合いはない。
ユニクロ(山口県/柳井正CEO〈最高経営責任者〉)は、そんな旧態依然としたアパレル業界の既存の分類を見直し、新たに「Life Wear(ライフウエア)」を提唱している。
では、「Life Wear」とは何か?
同社は、
「ふつう」に着こなしている。そこに、その人のセンスを感じる服。
「気持ち良く」着こなしている。そこに、その人のセンスを感じる服。
その服を初めて着た時、誰もが直感的に「自分に合う」と思える服。
その服を着るほど、誰もが当たり前に「これがなくては」と思える服。
それが「Life Wear」あらゆる人の日々を彩り、
ひとりひとりの生き方を豊かにしていく服。
と5つの文を使って定義している。
ユニクロは、2013年秋冬商戦において、「Life Wear」のコンセプトの下に、12のプロジェクトを設けて、さまざまな商品開発を進めている。
12プロジェクトとは、①ヒートテック(HEAT TECH)、②ウルトラライトダウン(ULTRA LIGHT DOWN)、③フリース(FLEECE)、④シルク(SILK)、⑤カシミヤ(CASHIMERE)、⑥コットンフランネル(COTTON FLANNEL)、⑦ウルトラストレッチジーンズ(ULTRA STRETCH JEANS)、⑧レギニングスパンツ(LEGGINGS PANTS)、⑨ウォームイージーパンツ(WARM EASY PANTS)、⑩デニム(DENIM)、⑪シャツ(SHIRTS)、⑫トピックス!(TOPICS!)である。
すでに④シルクと⑤カシミヤについてのプロジェクトについては、シルク商品の全世界展開、カシミヤ100%商品を4年ぶりに国内全店展開を再開するなどの施策を発表している。
「この2つの素材はラグジュアリー衣料に使われてきたようなところがある。しかし今の時代はラグジュアリーということが単に値段が高いとか高級ブランド企業が販売するのとは意味が違ってきている。今のラグジュアリーとは自分の気分が贅沢になれるもののことを指し、価格やブランドなどを超えたところにある」(滝沢直己ユニクロ デザインディレクター)。
シルクの価格帯は1990円~5990円(中心価格帯はシャツ3990円)。カシミヤは1500円~9990円(中心価格帯はカシミヤ100%セーター:メンズ7990円、ウィメンズ5990円)だ。
また、「Life Wear」を提唱するに当たっては、商品の見せ方も変えていく。
従来は、白バックに商品を載せる形で商品をフォーカスすることが主軸だったが、シルクとカシミヤのビジュアルは、仏のファッションマガジン『purple FASHION』誌のオリヴィエ・ザム編集長が担当し、商品の魅力を最大限に伝えるように努めている。
シルクは女性の美しさを表現する「花」を、カシミヤは肌に気持ちいい上質なリラックス感を表現するために「家具(椅子)」を、モチーフにした。
さらに、シルクプロジェクトのイメージキャラクターにはイギリス出身のモデル、リリー・ドナルドソンさんを、ウィメンズのカシミヤプロジェクトにはアメリカ出身の女優クロエ・セヴィニーさん、メンズにはカメラマンのライアン・マッギンレーさんを起用した――。
今後、ユニクロは、その他10個のプロジェクトについても、次々と方針を発表していくという。
どんな「Life Wear」を打ち出してくるのかに興味津々だ。