ウォルマートの株主総会(シェアホルダー・ミーティング)当日の朝は早い。
記者のホテル集合時間は午前5時20分。そこからバスで30分ほど離れた会場の「バド・ウォルトン アリーナ」に向かう。
入口で登録を済ませて場内に入ったのが6時30分。すでに前座のロックバンドがギンギンに演奏して、場内を埋めた約1万4000人のアソシエイト(従業員)や株主たちはすでにノリノリだ。
バンドのボーカルは、観衆に「グッドモーニング」と挨拶――。
そんな健康的なロックのライブをこれまで観た試しがない。
爆音ともいうべき大音声を耳にしながら、思い出したのは、イビチャ・オシム元サッカー日本代表監督の次のようなエピソードだ。
オシムは、日程上の都合から、代表選手に深夜スタートの練習を強いた。
その時に、選手に投げたのは、「この土地は深夜だけれども、地球上のどこかの国は朝だし、昼の国もある」という言葉だ。
地球規模の視点で物事を捉えており、「なんというグローバル感覚の持ち主だ」とオシムに舌を巻いたものだ。
ウォルマートがそのことを意識しているのかどうかは定かではないが、本部のあるベントンビルの早朝は、同社が進出するどこかの国では夜だろうし、昼の国もあるだろう。
また、早朝から始めれば、1日を長く有効に使えるという考えもあるかもしれない。
実は、滞在中の早朝集合は、株主総会当日だけではなかった。
記者の集合時間は常に午前5時過ぎだったのだ。
そんな出来事を振り返るにつけ、ウォルマートには“常識”と思われるものを逸脱した価値観があると思われるのである。