デザインとカラーが申し分なく、ネット通販で一目惚れ――。
去年の11月に購入した○○社のウインドブレーカーをいつ下ろそうかと考えた末に、テニススクールの春合宿に決めた。
4月中旬。満を持しての初登場と相成った。
ところが着用して試合をしているうちに違和感が…。
ジッパーで止められているはずのポケットが開いている。ジッパーを下げた覚えはないぞ、と訝しがって見れば、周辺からポケットが裂けていた。
お気に入りのカッコいいウインドブレーカーだっただけに、いきなりのがっかりだ。
合宿から戻った次の週末に、製造元の○○社に連絡を取ってみた。
長く電話による自動応対が続き、しばらく待たされた後に担当者が出てきた。
大まかな事情を聴取された後、「着払いで現品を送って欲しい」と指示される。
同時に「いくらで買ったかの明細も見せてくれ」と言われた。「普通、そんなモノは残っていませんよ」と答えたものの、ネットで購入したことを思い出して、ネットショッピングサイトに行き、購買履歴をたどってみると、購入実績と金額があった。
即座に、そのページをプリントアウトして、現品と一緒に梱包して、近くの酒屋から着払いで送付した。
それから2日後。
○○社の担当者から電話をもらい、「現品はもう売り切れてしまって在庫がない」と聞かされた。代わりに代替品の提示があり、「ヤフーなどの検索エンジンに、これから言う品番を打ち込んで確認して欲しい」とのこと。
自宅に戻って、パソコン画面上で確認したものの代替品には全く食指が動かなかったので、次の日に担当者にその旨を告げると「それならば返金します」と言う。今度は振込先の銀行口座番号を聞かれた。
そこから2週間後には、きっちり購入金額が振り込まれていた。
この話は、それ以上のドラマは何も起こらない。
担当者の応対も良く、ビジネスライクに徹してくれ、返金までの時間も大企業にしてはスピーディーと言えるだろう。
その意味では、教科書に掲載できるほどの“名対応”、と企業側としては自慢しても良いのではないだろうか?
けれども、立場変われば、である。
消費者である私の立場からすれば、まったく腑に落ちないことばかりだ。
ムキになって物言いをつける気はないけれども、ネットショッピングサイトで品定めしてから購入までの時間、○○社との連絡に費やした時間、返品や代替品確認などの諸作業をする時間…。
これだけの労力をかけたにもかかわらず、状況は購入前と同じになっただけだ。
誰が悪いということはないし、小さな人間と思われてしまうかもしれないが、私に残ったのは、あのウインドブレーカーを買わなければ、無為な時間を過ごすことはなかったという虚無感だけだ。