元来、小売業への参入障壁とは低かったはずだ。仕入れた品物に利益を付加して売るだけだからだ。やる気があれば、店舗さえなくとも商売はできた。だからだろう。海千山千、多士済々がこの分野には集まった。うまくいかずに早々と撤退を強いられた人もいたろうし、流通革命を実践したダイエー創業者、中内功さんのような革命家、セゾングループを発展させた堤清二さんのような知性派、ライフコーポレーションを興した清水信次さんのような豪傑もいた。
ところが最近は、どうだろうか? 寡占化が進み、ネットショッピングが普及し、PB(プライベートブランド)を始めとする製造小売業化が定着する中では、ある程度の資本力が必要になっている。小売業が近代化し産業化すること自体は喜ばしいが、そのことで参入障壁が高くなってしまうのは、少し残念な気がする。
ある大手チェーンの創業者は「創業者なんて、変態、変人ばかりだよ」と言って笑った。だが、“変態”や“変人”の宝庫だったからこそ、小売業界は発展してきたようなところはある。今後、放っておいても、破天荒な人物は、小売業界に次々と出現するのだろうが、その絶対数が減っていくことに寂しさを覚える。
『チェーンストアエイジ』誌2013年5月15日号