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ナレッジマネジメント

 1年に何度かは、断り切れずに講演を引き受ける。依頼されるのは、「流通業界の現状」というようなテーマが多い。壇上に立ち、話をしながら考えてしまうのは、「私の話す内容のすべては、断片的かもしれないけれども、いま目の前にいる数百人の社員うち、誰かの頭の中にあるはず」ということだ。

 

 すなわち、数百人の知識の断片を貯める仕組みがあれば、私の話などは不要になる。社員の頭の中には、それだけの遊休資産が宿っているわけだ。そんな仕組みをビジネスの世界では、ナレッジマネジメントと言う。個人の持つ知識や情報を組織全体で共有し、有効に活用する経営手法のことだ。

 

 イントラネット上にウィキペディア(オンライン百科事典)のような仕組みをつくれば、社員の知識をプールすることは可能だろう。たぶん、数年を待たずにそんなソフトウエアが開発されるかもしれない。そして、もうひとつ。注目しておきたいのは、知恵の集積だ。企業の中には、やはり社員の人数分、成長戦略や新規事業創造から現場の小さな問題解決に至るまで多くの知恵があると思われる。これらを項目ごとに集め、うまく使いこなすことができれば、現経営陣だけで考えるより、よほどすごいアイデアが生まれてくるに違いない。

 

『チェーンストアエイジ』 誌 2013年2月15日号