シンガポールには「雨の日はタクシーがつかまりにくい」という定説がある。
誰もが当たり前だと思うだろう。
雨の日は、多くの人たちがタクシーに乗りたがるので、一時的に需給バランスが崩れ、つかまりにくくなる、という理由だ。なにもシンガポールに限ったことではない。
しかし、本当にそうなのか、と疑念を抱き、この定説の真相究明に乗り出し、調査した男がいた。
いろいろな切り口で調べてみると、事実は、そこまで単純ではなく、少し違っていた。
シンガポールで最大手のタクシー会社は、事故を起こしたドライバーにはペナルティとして給与から1000ドルを差し引くことを規約化していたのだ。
罰金を恐れるドライバーは、雨季にスコールのような雨が降ると、クルマを右側に寄せ停め、止むのをひたすら待ち、何もしない。
そのことが需給バランスをさらに崩す原因になっていると判明した。
これまでの常識から物事を推理することは決して悪いことではない。実際に当たることも多いだろう。
しかしながら、一見、当たり前に思えることがそうではないということもある。
固定観念を疑い、常識を疑い、現実を徹底調査することがやっぱり大事である、とこの物語は教えてくれる。