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負けた相手はよく覚えている

 最近、テニススクールで知らない人からやたらと声を掛けられるようになった。

 私から、誰彼となく、挨拶をしていることもあると思うのだが、スクール内の試合にエントリーして、出場を繰り返していることも大きいのだろう。

 

 実際、過去に試合で対戦したことのある方から声を掛けられることも少なくない。

「いやー、前々回の大会では負けまして…そのうち雪辱させてもらいますよ」などと気さくに話しかけられるのだが、不思議なことに、試合で勝った相手というのは、ほとんど覚えておらず、「あれ?この人誰だっけ?」と頭の片隅で考えを巡らせながら、話を合わせていることが多い。

 

 逆に、負けた相手というのは、本当によく覚えているものだ。

 敗戦につながった“痛恨の1球”などは、その時の相手の表情とともにインプットされており、「いつか見ておれ!」と心のどこかで叫んでいる。

 相手はキョトンとして、きっと何も覚えていないであろう、にもかかわらずである。

 

 そう考えていくと、試合の勝者・敗者というのは、加害者と被害者の関係に似ているように思えてきた。殴ったことは忘れるが、殴られたことは覚えているようなもの――。

 もちろん、それはあくまでも私の中での話ですが…。