フジ(愛媛県)の尾﨑英雄社長は、視察先の店舗で衝撃を受けた。
トイレのドアの貼り紙に書かれた一文を読んだからだ。
貼り紙には次のように記されていた。
「未精算商品のトイレへのお持ち込みはご遠慮ください。未精算商品は案内所(インフォメーションセンター)でお預かりします。精算済みの商品も同様の扱いとさせていただきます」。
未精算商品のトイレへの持ち込み禁止の最大の理由は万引き防止だ。店舗によっては「店の商品持ち込み厳禁!」などと厳しい論調で書き、ご丁寧に侵入禁止のマークまで記している。
「お客様は神様です」と謳いながらも、その実は不信感を持っているのである。
尾崎社長は自身に問いかけた。
「トイレとはいったいどんな場なのだろうか?」。
「誰もが解放感のあるなかで用を足したいもの。精算の有無を問わずに、商品を抱えてトイレに行きたいと思っている人などいない。それなら、事前に商品を預かって差し上げるべきだろう」。
そして、「この店舗のように、そこまでお客さまのことを親身になって考えることがあるべき姿であって、それができる従業員を1人でも増やしていくことが経営者の大きな仕事のひとつだ」という境地に至った。
(『チェーンストアエイジ』誌 2012年4月15日号)