長いこと、取材ノートとして、大創産業(広島県/矢野博丈社長)のA4判、60枚(105円)を使っている。1冊を使いきるのは3か月ほどで60枚という枚数は、過去の記録を簡単に振り返ることができるので私にとってはちょうど良い。
切り替えは、次のノートが馴染んで軌道に乗るまで。そこまでは新旧2冊のノートをカバンの中に入れて持ち歩くのが通常だ。
この習慣が身に付くまでには、10年くらいを費やした。
当初は、メモ帳のような小さなノートを使ったり、レポート用紙、ルーズリーフノートや真ん中をスプリングで綴じてあるものを試したこともある。けれども、どれも私にとっては使い勝手がいまひとつで、ようやくいまの形になった。
私が使う大創産業のノートは、コクヨの「Campus」(キャンパス)ノートをラインロビングしたものと思われる。さすがはロングセラーであるだけに、使いやすさは群を抜いている。
そもそも、コクヨの「Campus」ノートは昭和50年(1975年)に発売開始。2011年10月のリニューアルで現在は5代目のモデルになる。生徒や学生だったころは、いまのように選択肢が多くなかったので、私は「Campus」のヘビーユーザーになっていった。
――とこんなことを書いていたら、1992年に26歳で死んだ尾崎豊さんの創作ノートが50冊ほど発見されたというニュースが流れた。
何度も何度も歌詞を推敲した跡や苦悩が書きこんでおり、3月22日発売の月刊誌『小説新潮』誌4月号で公開される。
尾崎さんのインタビューをまとめた単行本『再会』(ロッキング・オン刊:2002年)の中に「(アルバム『回帰線』の中の1曲)『存在』なんかの詞を書くに当たってはノート1冊使ったぐらいで。その1冊分の重みが出てるかどうかは別にしても――」とあったので、どこかに創作ノートがどっさりと保管されているに違いないと考えていたが、その通りだった。
実は、発見されたノートはコクヨの「Campus」ノートだ。
そして、尾崎さんの名曲の数々が「Campus」ノートで紡がれていたとなれば、親近感がわく方は少なくないのではないだろうか?
コクヨは、これを絶好の商機、ととらえ2月26日から、尾崎さんの創作ノートを押し出したTVCMを流す。
ちょうど、季節は新入学の時期。流通企業としては、この流れに乗らない手はないだろう。