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山手線は世の中を学ぶようなもの

 東京JR山手線の「品川」―「田町」間に、30番目の駅が新設されるという。

 早ければ、2014年までに着工するそうで、1971年に開設した「西日暮里」以来、40数年ぶりの新駅となる。

 現在の山手線は、全部で29駅あり、1周すると34.5㎞ある。

 高校時代と前職時代は、通学・通勤によく利用した。

 何度もくるくると周回を繰り返す中で、世の中を学ぶことは、山手線のようなものだと考えるようになった。

 乗車駅は人それぞれだが、1周すれば、社会全体を学んだことになるのではないかと――。

 たとえば、私は政治経済学部(=「上野」)を卒業したわけだが、世の中は政治経済だけで語れるものではない。

 隣接する「御徒町」は商学部であったり、反対の「鶯谷」は文化人類学部だったりするわけで、両隣にも立ち寄ったほうが実践としては役に立つ。

 そして、とっかかりは、どこの駅でもいいけれども、徐々に見聞を広めていき、1周するころには、世の中を学んだことになる――。

 そんな風に考えると、学校というものは、勉学や世の中を知るための入り口に過ぎず、「渋谷」(=理工学部)や「新宿」(=文学部)、「池袋」(=農学部)、「新橋」(=法学部)、「田町」(=体育学部)、「品川」(=医学部)…。学校で学んだことをベースにして、あとは独学または違う学校に通うなどして、境界をひとつずつ埋めていくことにこそ意味があるのだと確信するに至った。
 

 さらに世の中を学ぶためには学校以外の項目も必要だ。「目黒」(=人間関係)、「五反田」(=発想)などという駅もあるかもしれず、とても30駅では間に合わないかもしれない。

 いずれにしても、乗車駅というのは、たまたまに過ぎないが、山手線を1周するように学び続ければ、ゴールはみんな同じだといつからか考えるようになったのである。