12月13日、(財)日本漢字能力検定協会は「今年の漢字」として「絆」を選びました。
振り返ってみますと、2011年は、史上まれに見るほどの災害の年でした。
3月11日に起こった東日本大震災の地震、津波、福島第一原子力発電所の事故。台風12号、15号の上陸による甚大な被害。海外に目を向ければ2月に発生したニュージーランド地震、タイの洪水、フィリピンを襲った台風…。
しかしながら、被害が大きければ大きいほど、人々は、助けあいながら「絆」を強固なものにしていきました。とくに、日本国民は、他国、他都道府県、他企業や他人からの支援の前に「絆」を自分のこととして体感できたはずです。
そして、それが「絆」が選定された一番の理由のようです。
同協会は、その他の選定理由として、SNS(ソーシャルネットワークサービス)をはじめとする新しいメディアを通じて新たな人との「絆」が生まれ、旧知の人との「絆」が深まったこと。またSNSをベースにチュニジアの「ジャスミン革命」などの民主化運動が起こったこと。さらには、FIFAワールドカップで優勝した、なでしこジャパンのチームの「絆」に日本中が感動し勇気づけられたことなどを挙げています。
「美談の押しつけ」というシニカルな意見もなくはありませんが、斜に構えることなく、「絆」という文字をしっかりと正面から胸に刻みたいところです。
さて、私が挙げる「今年の漢字」は「失」です。
東日本大震災の地震と津波は、多くの尊い生命を奪いました。
多くの方たちが、家族を「失」くし、友達を「失」くし、先生を「失」くし、仲間を「失」くしました。
それだけではありません。職場を「失」い、学校を「失」い、住む地を「失」い、住む家を「失」った。
一方、炉心溶融による放射能漏れは、“冷温停止状態”に入ったとはいえ、継続しています。制御できない原子の力にわれわれは手だてや策を「失」っているのです。
自然災害とその上に重なった人災が、人々の夢や希望や光明を「失」わせたのです。
これを解決する立場にある民主党政権も、すでに国民からの信頼を「失」い、国際的信用を「失」っています。
政治家と言えば「失」言を繰り返すばかり。
国民の喪「失」感は、底知れぬものがあります。
さらに今年は、立川談志さん、スティーブ・ジョブスさん、など多くの国宝級の逸材を「失」った年であったことを付け加えておきたいと思います。(合掌)
ただ「失」をいつまでも嘆き悲しんでいても、何も始まりません。
どん底を見た後には、龍のように昇るしかない、と大きく期待を持ちながら、新しい年を迎えたいと思います。