2011年のもっとも面白い漫才師を決める『THE MANZAI 2011』(フジテレビ系)が12月17日に放映された。1516組の頂点を極めたのは、2009年のM1グランプリの王者である「パンクブーブー」だったことは、もう周知のとおりである。
長時間ながら番組は、大接戦でたいへん面白かった。
『THE MANZAI 2011』を観ていて、驚いたのは、「ワラテン」なる視聴者投票システムである。
視聴者は、漫才師のネタ中に携帯電話やスマートフォンからアクセスし、「笑いボタン」を設置したページを持ちながら見る。ネタ中に面白いと思ったら、「笑いボタン」を押すというもの。その総合計回数を100点満点に換算して、最高得点だったグループに審査員投票と同格の1票が入るという仕組みだ。
双方向で視聴者のタイムリーな情報がTV局に伝わり、ネタが受けているのかどうかが即座に分かるシステムは、ネットワーク社会にもしっかり対応しており、現代的・画期的であると言えるだろう。
ただ――。
天邪鬼な私は、どうもこうした取組には疑問符をつけ、文句のひとつも言いたくなってしまう。
もっと漫才師の漫才の内容に集中して楽しんだらどうか、と思えてしまうためだ。
今の若い世代なら、ボタンを押しながらでもネタに集中できるのかもしれない。
しかし、あれもこれも同時進行できるほど器用ではない私にとっては、ボタンを押しながら内容を理解して心から楽しむ、ということは到底無理だ。
現代のスピード感のある早口の漫才ならなおさらだ。
このことは、自分の子供の運動会やお遊戯会のビデオ撮影に熱中する親たちにも通じるものがある。ビデオ撮影や撮影ポジション取りに懸命になるがあまり、運動会やお遊戯会のオーディエンス(聴衆)としては、集中できずに楽しんでいないように見えるからだ。
むかしから、“ながら族”という類の人種はいたものだし、現在の私も家ではAMラジオを聞きながら、仕事やパソコン、趣味、家事など大抵のことをやっている。
しかしながら、イベント鑑賞の醍醐味は、今、目の前で起こっていることに集中して、現場を当事者や目撃者として一体となって楽しむことにあるはずだ――。
と思うのだが、もはや、こんな考え方自体がおかしいのかもしれないなあ。