サービスとホスピタリティの違いは何だろうか?
ザ・リッツ・カールトン日本支社元代表で人とホスピタリティ研究所代表の高野登さんの答えは明快だ。
サービスは、提供する企業が基準を決めるもの。
ホスピタリティは、提供されたお客が評価するもの。
サービスとは、突き詰めて言えばマニュアルである。
ザ・リッツ・カールトンには、こんなケーススタディがある。
9階に用事のあるホテルの従業員と10階に部屋を取ったお客が1階から同時にエレベータに乗りこんだケースである。
一般的なサービスであれば、従業員は、①お客に行き先を尋ね、②ボタンを押し、③9階でストップ、④「お先に失礼します」と丁寧に断りを入れ9階で降りる。
まったく普通の行動であり、これで何の問題もないはずだ。
ところが、ホスピタリティは違う。
一緒にエレベータに乗ったら、①お客に行き先を尋ね、②ボタンを押す。
ここまでは同じだ。
しかしここからが大きく異なる。
③自分の階は押さずに、まず10階へ直行、④お客を送ってから、⑤改めて9階のボタンを押し、9階で降りる。
お客は10階で降りない従業員を不思議に思って聞くだろう。「どうして降りないんですか?」。
従業員は「9階に行くからです」もしくは、お客に気を使って「用事を思い出しましたから」と言うかもしれない。
従業員の行動をお客がどう受け止めるかは分からない。しかし、一事が万事。そうしたホスピタリティを含む行動を繰り返していれば、いつか必ずお客に伝わり琴線に響くはずだ。それがひいては、お客のリピートにつながる。
そして、ホスピタリティの感覚を持つ従業員が多ければ多いほど企業は見えない強さを備えることになる。
(2011年2月12日、コーネル大学リテール・マネジメント・プログラム・オブ・ジャパン高野登氏特別講演@東京国際展示場会議室棟609号室より)