<トレードオフ>することで実現した低価格ジーンズが霞んでしまう――。
Tシャツを新しいTシャツのブランド“UT”として再構築したユニクロ(山口県/柳井正社長)は、2010年春からジーンズブランドの“UJ”54アイテムを発売する。
ロゴをデザインしたのは、ご存じ佐藤可士和氏。コンセプトは、「ジーンズを変えていく。」で「FIT(シルエット、はき心地)」「FABRIC(素材)」「FINISH(縫製 加工 デザインディティール)」の「3F」を追求しながら、新しいジーンズを世界中に提供する。
プライスラインは、(1)全てにこだわりつくした3990円のプレミアムライン、(2)カラーバリエーション豊富な2990円のスタンダードライン、(3)デイリーユースに最適な1990円のシンプルラインの3つ。
さすがに、子会社の「g.u.(ジーユー)」(980円)やダイエー(880円)、西友(1470円)、イオン(880円)、ドン・キホーテ(690円)には価格では勝てないけれども、ある程度、値段を下げながら、価値を付加していることがユニクロのスゴみだ(カッコ内はジーンズの価格)。
たとえば、ウイメンズのスキニーフィットテーパードジーンズでは、お尻の部分を横断するバックヨークという縫い目に若干カーブ(通常は直線)をつけた。そのサイドには見えないダーツを入れ、ヒップアップを惹起する。ヴィンテージ感のあるボタンを使用し、ケミカルウォッシュするなどユーズド感の表現にもこだわった。
<トレードオフ>は、不要と思われる機能やデザインを取りやめることで、売価を下げる小売業の商品開発手法だ。消費者の立場になって考えれば意外と簡単にできるが、大手チェーンストア企業の格安ジーンズが示すように行きつく先は同質化である。
ところが、ユニクロは、機能性やデザイン性の向上と価格ダウンという相反する2つのことをこともなげに実現している。
つまり、価格を下げて品質は上がっている――。
もうこうなると誰もユニクロを止められない気がしてくる。