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商品や店舗を抜本的に見直したいんです(後編)

 昨日の続きです。

 

 私「Mさんは、店舗も根本的に見直したいとおっしゃっていました」

 

 Mさん「そうです。たとえば、〈尺〉単位の什器です。この平成の時代になぜ店舗に尺貫法が残っているのかが分かりません。頭から否定するつもりはありませんが、現状が本当に正しいのかどうかを疑ってみることは必要でしょう」

 

 私「その通りです。そもそも小売業界は尺貫法をいつごろから使ってきたですか?」

 

 Mさん「江戸時代の呉服商の商売に由来するという説が一般的です。当時の商売は、『座売り』といって、店員は座ることでお客様に相対していました。もちろん座るのは畳の上。畳の寸法は3尺×6尺で、座った店員の占めるスペースは半畳。すなわち、3尺×3尺の正方形を基本スペースにして、店員は座ったままで少し体を移動させれば棚から反物を取り出せ、それを広げて見せるように店舗設計がされていました。棚の幅を3尺単位にしておけば、さらに便利だったのでしょう」

 

 私「その名残がいまだにあるということですね」

 

 Mさん「そうです。江戸時代の成人男子の平均身長は160㎝弱と言われていました。それがいまは170㎝強になっています。人間の身体のサイズを元に生み出された〈尺〉は、現実に即していないんじゃないかと疑うのは当然じゃないですかね」

 

 私「売場面積にも〈坪〉が使われていますし、お酒や醤油やお米などはいまだに〈合〉〈升〉が使われています。さすがに〈匁〉〈両〉〈斤〉〈貫〉など質量の単位は、日常生活からは姿を消しましたが、分量単位の〈分〉〈厘〉〈毛〉〈糸〉はプロ野球の打率などで時々目にすることがあります。たぶん現在、小売業の売場で働いている方は入社した時から、当たり前だったのでしょうね。でも、入社した時からそうだから、それが正しいということにはなりません。Mさんのおっしゃるようにすべてを根底から見直してみるというスタンスは必要だと思います」

 

 Mさん「それを社内でずいぶん言ってきているんですが従業員にはなかなか響きません。新しい小売業の形をつくりあげるには新しい発想が必要であり、過去の遺物のようなものは切り捨てていかなければいけません。ところが恥ずかしいことに当社の従業員も日々の業務に追われ、そんなことを考える気配も見せません。現状否定は大事だと思うのですが、否定する現状を認識していません。どうしたらいいものやら困り果てているのです」