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一期一会

 入社以来、長く一緒に仕事をしてきた女性がフリーライター稼業から足を洗うという。

 寂しい話だ。

 「就職する」ということだから、何かよほどの事情があってのことなのだろう。

 

 振り返ってみると、彼女とは20年以上の長きにわたって、良い時も悪い時も、一緒に仕事をしてきた。叱咤され、激励され、艱難辛苦を一緒に乗り越えてきた。

 

 しかし、彼女について知っていることといえば、彼女の生活のほんの一角に過ぎない。

 20年以上付き合ってきても、その程度なのである。

 

 終身雇用制が崩壊しつつあり、飲み会や慰安旅行の機会が職場からどんどんなくなって行くこれからの時代は、サラリーマンの会社への帰属意識は、きっとこれまで以上に希薄になるだろう。

 だから、会社内の人間関係は、ますます仕事の場面が中心となり、薄くなっていくに違いない。

 

 創業40年超を迎えたわが社も、これから定年ラッシュを迎える。

 そう考えながら、先輩方の顔を思い出すと、ライターの女性と一緒で、一私人として見れば多くを知らない。

 「会社とは所詮そんなもの」と割り切れるのであれば、話は簡単だ。

 

 しかし、この広い日本で数百万と存在する会社の中で、同じ時期に一緒に働き、家族以上に同じ時間を過ごし、同じ釜の飯を食べてきたことを考えると、メンバーとの邂逅とは奇跡と言ってもいいし、やはり大切にしたいものだ。

 

 好き嫌いや、合う合わないは、当たり前のこととしても、振り返ってしまえば、一緒に仕事をできる期間は、あまりにも短い。

 

 「一期一会」。

 改めてこの言葉をかみしめている今日この頃である。