「もし携帯電話が通じていたならば、津波による死亡者数はもっと減っていたかもしれない」と東日本大震災で津波に襲われたエリアの人々は異口同音に振り返る。
「携帯電話がパンクしなければ、ここまでたくさんの死者を出さずに済んだのではないか」と。
三陸海岸には「津波てんでんこ」という言い伝えがある。
「大きな地震が起こったら、津波が来るから、てんでんばらばらに逃げろ」という意味だ。自分の命だけは自分の責任で守れ。親、子、縁者、親戚は、ほうっておいてとにかく逃げろというものだ。
ところが頭では理解していても、身体はそうは動かない。
やはり、非常事態に直面して慌てふためく中では、まず家族のことが気になるものだからだ。
ここでもし携帯電話が通じていたならば、数秒のうちに親族の安否確認をして自分の身の安全確保に徹することができたに違いない。
しかしながら、現実的には、回線がパンクしてしまい、通じなかった。
その結果、安否を実際に確かめようと、親族の家に立ち寄りしていたために、逃げ遅れて、津波に巻き込まれてしまったというケースが多々あったようだ。
非常時にこそ携帯電話の機能が求められる。だからこそ、パンクすることは当たり前とされては困る。
多くの生命が救えるのだとするならば、どんな巨額の投資をしたとしてもパンクしない通信インフラを整備する必要がある。