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コメリ、日本で本物のホームセンター企業をめざす

 2010年7月23日、コメリ(新潟県/捧雄一郎社長)は島根県出雲市に1000店舗めの店舗を開業した。1000店舗の到達は、ホームセンター業界では初の快挙になる。

 

 コメリの最大の強みは、同じことを鈍牛のように繰り返す持続力にある。生き馬の目を抜く流通業界にあって、基本方針を変えないことは、できそうでできないことだ。

 その時その時の流行やトレンドが方針変更を誘惑するからだ。

 

 ところがコメリは、捧賢一会長を先頭に信念を持って、店舗網の拡大を続けてきた。

 

 同社の特徴は、ホームセンターとしては圧倒的に小規模の「ハード&グリーン」の大量出店にある。1983年、1号店を開業。僻地や過疎地など、商圏人口が小さすぎるためにホームセンター各社が出店を躊躇した立地を選んで出店を重ねてきた。白根(新潟県)、郡山(福島県)、福井(福井県)、高崎(群馬県)、三重(三重県)、岡山(岡山県)、花巻(岩手県)、九州(福岡県)に設置した物流センターが小型店舗の運営をバックアップする。

 

 ただ、基本方針は変えないものの、店舗の中身は、いまも徐々に変化させている。

 たとえば、「ハード&グリーン」の当初の標準売場面積は500㎡だったが現在は1000㎡と倍増している。

 

 また、以前の〈ハード〉は同社の出身地である燕三条産の金物商品、〈グリーン〉は地元産の園芸商品のことを指した。

 ところが今日に至っては、〈ハード〉、〈グリーン〉の意味する商材も変わってきている。

 捧雄一郎社長は、「コメリがターゲットに定めているのは、通常のDIY(Do it yourself)愛好者だけではない。BIY(Buy it yourself:消費者は商品を買うだけ。取り付けはホームセンターが担当)、プロ業者(工務店、農家など)と3種類のお客さまがいらっしゃる」と言い、その獲得に向けたマーチャンダイジング(商品政策)をさまざまな切り口で強化している。

 

 核部門としているのは3つだ。

 1つめは、資材建材である。木材や建材のみならず、リフォーム需要の奪取も狙い商材を揃えている。同社の〈ハード〉は、もはや鍋釜類だけのことではない。

 2つめは、農業資材である。以前、園芸用品を指した〈グリーン〉は、それに加えて現在は農業従事者(=農家)も対象にJA(農協)の独壇場の切り崩しに努めている。「農業資材、肥料、農薬の売上合計は約300億円。これを1000億円まで増やし国内シェアを10%まで高めたい」(捧社長)。その実現に向けて、店舗には農業アドバイザーを配置。9月30日現在、17県下に33人を配属し、186店舗をカバー。今期末までに80人に増員、400店をカバーする体制に持っていきたいという。

 そして、3つめは、今現在、力を入れているホームファッション部門である。専門店の「アテーナ」を1万㎡クラスの大型店舗「パワー」業態の中に1500㎡強のスペースで展開し、イケアやニトリの牙城取り崩しに乗り出した。

 

 これまで優先させていた「ハード&グリーン」業態の出店に加え、「パワー」業態、「ホームセンター」業態の出店も強化する。2010年2月にはパワー事業部も新設している。

 

 「日本で本物のホームセンター企業をめざす。ニッチトップを狙いたい」と捧社長の目線は1000店舗の感慨にふけることなく、すでに将来を見据えている。

 

 (現在発売中の『ダイヤモンド ホームセンター』誌ではコメリ大特集を組んでいます)