チェーンストア経営者の“価格破壊”への執念は凄まじい。ダイエー創業者の中内功氏の“牛肉”に始まり、これに影響を受けたGMS(総合スーパー)、ホームセンター、ドラッグストア、100円ショップの経営者が続き、情熱を傾けてきた。
この間、実に50年。近年は、デフレ効果も作用して、日本の物価は着実に下がった。もはや需要曲線の常識を覆す領域に到達しており、「安くしても売れない時代」に突入した感さえある。
にもかかわらず、いまの流通業界では、粗利益を削っての出血大サービスが横行。値引き原資を確保しないままに、商品を安価に提供することのみに盲進しているように見える。
もはや、消費者は安いだけの食品や生活雑貨商品にも辟易とし始めている。また、身を削っての安売りに流通業界側にも疲弊感が漂い始めた。
では、低価格化を推し進める必要はもうないのかといえば、そうではない。
たとえば、「リフォーム」だ。現状、ホームセンターや家電専門店などが扱うリフォーム工事の価格は、ライバルの工務店に対して圧倒的な差があるとは言い難い。市場相場の2分の1や3分の1で常時提供できれば相当の需要を獲得することができるはずだ。
同じように、高値安定しているような商品は、市場にはまだまだ多い。
“価格破壊”は、前人未踏の分野で悪戦苦闘し、構造として確立するからこそ価値があるのであり、消費者からも支持される。
他社と同じことをしていては、差別化などできるはずはない。