出張帰りの新幹線で何を読もうかと立ち寄った書店でサイゼリヤ(埼玉県/堀埜一成社長)の創業者である正垣泰彦(現会長)さんの『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』(日経BP社)を購入。2時間半であっという間に読み終えた。
サイゼリヤは、低価格のイタリア料理店「サイゼリヤ」をチェーン展開するフードサービス業。現在は947店舗(中国65の店舗を含む)を出店しており、連結売上高は998億円に上る(2011年8月期)。
同書では、正垣さんの実体験に基づくオリジナルの経営論が展開されていく。
中でも、ひと際異彩を放って輝いていたのは、「(外食の経営者は)『自分の店の料理はうまい』と思ってはいけない」(p9)の一言だ。
「『自分の店の料理はうまいと思ってしまったら、売れないのはお客が悪い。景気が悪い』と考えるしかなくなってしまう」(p9)からだ。
では、正垣さんは、おいしい、まずい、を何で判断しているのか?
それが客数なのだという。「客数が増えているなら、その店の料理はおいしい。逆に客数が減っているなら、その店の料理はおいしくないのだから、何かの対策を講じるべきだ」(p50)。
その考え方が、本書のタイトルということになる。
確かにその通りで、とかく人間は、自己満足に陥りがちなものだ。
そして、「これだけ苦労してつくった味だからおいしいに決まっている」と独善が頭を持ち上げてしまうと、もう埒が明かない。
これは何も外食産業に限ったことではなく、食品スーパーでも同じことが言えるだろう。
たとえば、商品開発担当者自慢の「コロッケ」の販売数量がどうなっているのかは必ずチェックしたい。購入客が全客数の1割に満たないとするならば、味に改善の余地があるということだろう。
われわれ『チェーンストアエイジ』誌の場合なら、発行部数ということになる。
自分たちが一生懸命つくったものは、子供のように可愛いものだ。もちろん、感情的にはそれでかまわない。
しかしながら、商売としてはそれではダメで、客観的・科学的アプローチでメスを入れる必要がある、ことを正垣さんは教えてくれる。