いま、ヨークベニマル(福島県/大高善興社長)の社員の名札の中には、三つ折りされ名刺より一回り小さなサイズにしたパウチカードが入っている。
カードには、「企業理念」「創業精神12章」「ヨークベニマルが実現すること」「感じの良いサービスを実践いたします」のほか、「商品を自転車に積んで行商に出かけるママさん」と「創業当初のヨークベニマル(中町店)」の写真が印刷されている。
読めば、ズシンと重い内容だ。たとえば、「創業精神」の第8章では「オトリ商法ではお客様は釣れない。全商品が平均して安いこと」とEDLP(エブリデー・ロープライス)について言及している。「昭和23年に私の父が記したのです。いいことが書いてあるでしょ」と大高社長は頬をゆるます。
厳然と明文化され存在する企業理念もいつしか忘れられてしまい、実感のない標語になっていく。だからカードを配布して常に眺め、忘れぬようにしようということなのだろう。
食品スーパーの歴史もそろそろ60年。同じような状況に直面している企業は、案外多いはずだ。
(『チェーンストアエイジ』誌 2010年9月15日号)