「週のうち3日は、アマゾンの箱が届いている」とおっしゃるのは懇意にしている某大学某教授。共働きなので、実店舗に日用雑貨や生活雑貨を小まめに買いに行く時間がなかなか取れない。だから奥さんが重宝がってアマゾンを頻繁に使っているのだそうだ。
世間には、こんな家庭が増えている。
毎週月曜日と木曜日にゴミ収集場を覗けば、アマゾンの箱がゴロゴロと転がっていることからも納得できる。
数字的な裏付けもある。
アマゾンは2000年に日本市場に参入以来、わずか15年間で売上高1兆円を突破した(2015年度)。ダイエーが日本の高度経済成長期のど真ん中で売上高1兆円を突破したのは、創業23年後の1980年だから、破竹の勢いであることがわかる。
今のところ、生鮮食品や総菜については、アマゾン ジャパン(東京都/ジャスパー・チャン社長)では取り扱っていない。けれども「地球一の品揃え」を標榜する同社にあって、それも時間の問題だ。
母国アメリカでは、生鮮食品や周辺の外食業のメニューを扱う「アマゾンフレッシュ」が2007年からスタート。食品スーパーマーケットの実店舗2000店出店計画なども飛び出している。
そして、そんなアマゾンの脅威を日本の食品小売業の方々に機会のあるたびに話しているのだが、まだあまりピンときていないようだ。
振り返れば、会員制ホールセールクラブのコストコホールセールクラブ(以下、コストコ)がある地方に出店した時にも同じようなことがあった。
コストコの売上の約35%が食品。「売上150億円店舗なら52億円が食品になる。何か手を打ったらどうか」と申し上げたが、「業態が違うよ」と木で鼻をくくるような言葉が返ってきた。
しかし、1年後に同じ企業を再訪すると「コストコの食品はすごい。だから対策を打っている」と同じ方に熱く語られてしまった。
アマゾンは、間違いなく食品スーパーを脅かすことになるだろう。しかし、まだまだ食品小売業界内で働く方々の認識は甘いと言わざるをえない。
実は、そんな彼らの妻子は、アマゾンで買物三昧。毎日荷物は届いているのだが、そんな実態を知らないのは流通業で働き、帰宅も遅い夫のみということがままある。