コロナ禍の影響による外出自粛で苦境に立たされている飲食店業界。全国チェーンの企業ですらも売上維持に難儀するなか、特定の地域だけで店舗を展開する「ローカル飲食チェーン」が地元住民からの絶大な支持のもと生き残っている。本書は、TV番組の元放送作家である著者が選定した全国7つのローカル飲食チェーンの魅力とその強さの秘密を現地取材を通して分析した解説書である。
本書では、「福田パン」(岩手県)、「551HORAI」(大阪府)、「ばんどう太郎」(茨城県)、「おにぎりの桃太郎」(三重県)、「ぎょうざの満州」(埼玉県)、「カレーショップ インデアン」(北海道)、「おべんとうのヒライ」(熊本県)という7つのローカル飲食チェーンについて紹介。各チェーンの商品開発や利益確保の手法、徹底した地域戦略、全国進出しない理由などを解説したうえで、最後にまとめとしてそれぞれのチェーンに共通する「12の強さ」を述べている。
三重県四日市市とその周辺のみで店舗を展開する「おにぎりの桃太郎」は、主力商品のおにぎりを中心に弁当や総菜、和菓子などを販売するチェーンだ。テイクアウトが主体だが、店舗によってはイートインスペースも備え付けられている。おにぎりは保存料不使用で消費期限が当日なのが特徴である。地元でなじみのあさりのしぐれ煮をおにぎりにした「しぐれ」などが人気商品だ。イベントなどの予約にも対応しており、当日が雨の場合に朝6時までなら何人前でもキャンセルが可能という独自のサービスも実施している。以前からおにぎりに限らずすべての商品を個包装していることから、コロナ禍でもテイクアウトで売上減をカバーできているという。最近では商品に使う米を三重県の銘柄米に変えるなど、地域密着に磨きをかけている。
食品スーパー(SM)業界でも地域対応の重要性がいわれて久しい。SMの総菜の商品開発担当者などにとっても、本書で紹介されているローカル飲食チェーンの戦略は地域対応を考えるうえでヒントを与えてくれるだろう。