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落語家・立川志ら乃のスーパーマーケット徒然草   第16回 勝手に応援!関東ローカルの星「文化堂」のこれからを考える

あの雑誌「Hanako」のインタビューに、TBS系のドラマイベントへの登壇など、あわただしい師走を過ごす志ら乃師匠。そんななかでも”スーパー愛”はとどまることを知らず…。今回は、ひょんなことから「関東・東京にもローカルスーパーはあるのだ」と気づき、その1つ「文化堂」についてアレコレ考えを巡らすというお話。

46歳の冬。胸に深く刻まれた「関東ローカルスーパー」という言葉

大好きなオオゼキは関東ローカルだった! ちなみにオオゼキ全店踏破をめざしております(写真は松原店)

 現在発売中の雑誌「Hanako」1月号でスーパーマーケット特集が組まれ、ありがたいことに「スーパー好き落語家」ということで”スーパー対談”をさせていただきました。対談相手はスーパー研究家の菅原佳己さん。テレビの情報番組などにもよく出演されている方で、スーパー関連の知識などは私の数十倍。いつもだとポカンとされるスーパーのマニアックな話も、まるで日常会話のような感じでお話しできて至福のひとときでした。

 その対談の最中、「大手スーパー」というテーマで話を振られたとき、私が「オオゼキ」のことを語ろうとしたら、「オオゼキは関東ローカルですよね」というご指摘。自分の身の回りに普通に存在しているものは、誰の周りにも存在していると勘違いすることはあるかと思います。私にとってオオゼキがその1つでした。

 私は東京で生まれ、いわゆる「故郷」という場所を持っていないので、「地方にはこんな変わった特徴的なローカルスーパーがあります!」みたいな特集をテレビや雑誌の記事などで目にしては、「地元民だけが知っている情報」や「故郷を持つ人たち」への羨望が絶えませんでした。

 しかし私にとって、関東ローカルスーパーを知ることが、先述のそれに当たるものじゃないか!と46歳の冬に気が付き、「関東ローカルスーパー」というキーワードが胸に深く刻まれることになりました。

市場関係者もびっくりの「1カ月毎日豊洲生活」で文化堂巡りに興じる

 その状態になってすぐ、TBSドラマ関連のイベント「キュンキュンフェス」というものに出演することが決まり、30日間毎日豊洲にある会場に通うことになりました。11月17日~12月16日まで一日も休まず豊洲に通うというイベントは、豊洲市場へ転職したとしてもなかなか得られない機会だと思い、豊洲近辺のスーパー、できれば関東ローカルのスーパー中心に毎日足を運ぶぞと心に決めたのでした。

 実は「豊洲文化会館」で落語会を定期的に開催しているので、会場から近いららぽーと豊洲の中にある「フードストアあおき東京豊洲店」にはポイントカードをつくるくらいよく行っているのですが、ビバモール2階の「文化堂豊洲店」や豊洲駅ほぼ直結の「スーパーサカガミ グランルパ豊洲店」にはあまり足を運んでいませんでした。そしてこの2つのスーパーが関東ローカルスーパーであることも、今回初めて気が付いたのです。

文化堂月島店での戦利品の数々

 このうち文化堂についてウェブサイトで調べると、豊洲近辺に複数の店舗を構えていることが判明。豊洲から歩いて「月島店」、晴海大橋を渡って「勝どき店」、そして豊洲とは反対方面へ歩いて「有明店」と連日の文化堂巡りが始まりました。

 まず豊洲店は店舗も大きく、お客さんも常に多く活気があり、月島店も同様。しかし勝どき店は近くにある「FUJI デリド勝どき店」(運営:富士シティオ)に比べると、店内は若干暗い印象を受けたので、「照明かレイアウトを少し工夫するだけでかなり変わるのでは?」などと、どの立場からの意見なのかよくわからないことを思っておりました。

 しかし総じて文化堂は私好みのスーパーであることには違いなく、最後に「有明店」に行くのも楽しみにしておりました。文化堂有明店の場所を確認しようと検索すると、近くに「イオンスタイル有明ガーデン」が5月にできていることを知り、文化堂のあとにイオンにも寄ってみるかと、現地に向かいました。

イオンスタイルの“手加減なしの商い”に驚愕! 文化堂…大丈夫なの?

“手加減”を一切感じないイオンスタイル有明(写真はダイヤモンド・チェーンストア誌より)

 文化堂有明店は大型マンションの1階にあり、イオンが出来る前までは周囲に直接競合するスーパーもなく、住民がそのままお客さんになるという好条件で展開されていたのだと思います。

 私が入店したのは土曜日の15時過ぎで、お客さんはまばら。まぁそういう時間なのだろうと、目と鼻の先にあるイオンスタイルに向かうと…大勢というわけではなかったですが、文化堂に比べればかなりの数。もちろん、大型複合商業施設「有明ガーデン」のテナントだし、12月の頭には関東最大の売場面積を誇る「無印良品 東京有明」も施設内に開店とのことで、話題性も充実。

関東最大級の売場面積を誇る「無印良品 東京有明」も開業だって言うんだから大変なことに

  わたくし、正直イオンは見かけても寄らないことがあるくらい関心が薄かったのですが、有明のイオンスタイルに入店して「はっ!」としました。さまざまなスーパーを研究しつくしていることが一目瞭然。いいとこどりのオンパレード。「いやいや、イオンが先にやってました」という可能性も十分ありますが、とにかく“手加減なしの商売”をしている印象を強く受けました。商売なんだからそんなの当たり前なのですが、「文化堂有明店…どうなっちゃうの?」と本気で心配になりました。こんな体力のある複合商業施設とどう戦っていくのか。

文化堂よ!小兵・炎鵬のごとくイオンスタイルに立ち向かえ!

イオンスタイル開業の影響を勝手に心配している文化堂有明店。杞憂であれば本当に申し訳ございません

 そして、こんな妄想を抱きます。もし文化堂有明店の売上が目に見えて落ちていて、それをどうにかしないといけない立場になったら何をするだろうか…?

 「安売り」で戦っても勝ち目はない。しかし「よそはよそ、うちはうち」という態度ではじり貧になる気がする…。芸人が売れる手段としては、影響力のある人に「こいつおもしろいよ」と言ってもらうのがなにより。それを当てはめるならイオンスタイルに「近くに文化堂っていういいスーパーがあるよ」と喧伝してもらうのが最良だけれども、おそらく不可能。

 うわ! 何も思いつかない!! …待てよ、仮に9割の客を持って行かれたとしても、残りの1割を熱狂的な根強いファンに育てて行けばどうにかなるのでは? イオンスタイルにはなくて、文化堂にある「売り」はあるのか?

 そこでふと「関東ローカルスーパー」というキーワードを思い出しました。これを前面に押し出して、イオンスタイルや有明ガーデンと真っ向勝負!みたいなことを大々的に打ち出すのはどうだろうか?

「イオンスタイルとまったく同じ量のおこわ販売中!」
「有明ガーデンのカルディでも好評の缶詰はこちら!」とか、

 とにかくローカルスーパーがイオンスタイルや、大手複合施設に挑んでいる姿をアピール。

「先日開業した無印良品で買って来た棚に並べてあるピザはこちら!」

 でもなんでもいい。小兵力士の炎鵬が大きい力士に向かっていく姿勢に感動するのであれば、スーパーだってその姿勢を見せ、感動を与えればいい。

 そしてこれはちょっと有明店の話とはずれてしまいますが、関東ローカルスーパー同士でのコラボというか、相互乗り入れみたいなことはできないのか? とも妄想。例えば、文化堂とオオゼキの”相互乗り入れ”みたいな。オオゼキに通っていた人が引っ越しをして、その転居先に文化堂があれば文化堂のファンになってくれる可能性が高いだろうし、オオゼキのことも忘れないでいてくれるのではないだろうか。

 経営のことなど何もわからないので、どれくらい無茶苦茶な意見なのかがわからないけど、大手の出店攻勢にローカルスーパーが対抗しなければならない場合、すでに存在する店舗を利用する以外にないように思うのです。

 ここまで、完全なる素人了見としての意見をいろいろ書きましたが、それは私自身、師匠志らくからの「何でもいいから、とにかくオレを超えろ」という難題に応えられない日々を過ごしているので、勝手に文化堂有明店を自分に置き換えて考えてしまいました。

 あと、文化堂有明店がイオンスタイルができて困っているというのは私の妄想で、順調な経営を続けているのであればテキトーなことを言って本当にごめんなさい。

 追伸。現在、文化堂のお総菜全種類食べ尽くし企画をひっそり開催中です。機会があればいずれ本連載でもお伝えします。

 

 

立川志ら乃

1974年2月24日生まれ。98年3月、立川志らくへ入門。2012年12月に真打ち昇進。16年7月に「スーパーマーケットが好きである」ことを突如自覚。スーパーに関する創作落語に「グロサリー部門」「大豆なおしらせ」など。寄席やイベントなどのスケジュールは下記Twitter・ブログをご参照ください。

Twitter:@tatekawashirano

ブログ:https://ameblo.jp/st-blog/