長崎県の小さなカメラ販売店からスタートしたジャパネットたかたは、1994年からテレビショッピングを開始した。創業者である髙田明氏が、その独特の声と語り口で商品を紹介する番組をTVで見ていた人も多いだろう。2007年にはジャパネットホールディングスを設立。持ち株会社体制に移行し、現在はジャパネットたかたを含め8社が傘下に入っている。主力である通信販売事業のほか、本社のある長崎県のサッカークラブの経営や、地域活性化などを行う「スポーツ・地域創生事業」にも取り組んでいる。
ジャパネットグループは明氏のカリスマ的リーダーシップによって成長を続けてきたが、15年1月に社長職を息子・髙田旭人氏に譲り引退。本書は、序章、第1~5部、終章で構成され、後を継いだ旭人氏が同社の歴史と明氏のカリスマ性や経営手法を振り返りつつ、自身が社長となった現在の事業戦略や働き方改革、組織マネジメントなどについて記した述作である。
注目したいのは、組織マネジメントについて書かれた第3部だ。先代社長の明氏はすべての業務に関わり、社員からの問いに常に完璧な答えを持ち、次々と指示を出していったという。しかし、「とても父と同じようにはできない」と思った旭人氏は、明氏が引退した後でも会社が成長を続けられるよう、社員一人ひとりが明確な意志を持ち、自ら判断できるような環境づくりに取り組んだ。旭人氏は、社員の意欲を喚起するような環境を企業が整備することが必要だと主張しており、さまざまな施策を実施している。たとえば、参加自由の研修を週に1回、業務時間内に開催。生産性向上やプレゼンテーションなど業務に直結したテーマもあれば、社員の視野を広げるため、健康的なダイエット方法など仕事に直接関係しない内容のものも多く開催しているという。
圧倒的なカリスマ性で成長をけん引してきた明氏が会社を去った後でも、ジャパネットグループの売上は右肩上がりを続けている。それは、旭人氏が明氏の意志を受け継ぎながら、さらなる発展のために数々の改革を実施したからだろう。本書を読めば、その秘密がわかるはずだ。