[東京 23日 ロイター] – 政府は23日、4月の月例経済報告で景気の総括判断を「新型コロナウイルス感染症の影響により、急速に悪化しており、極めて厳しい状況」とし、3月の「足元で大幅に下押しされており、厳しい状況にある」からさらに下方修正した。
景気判断に「悪化」の文言が入るのは、2009年5月以来10年11カ月ぶり。項目別でも「消費」「輸出」「生産」「企業収益」「業況判断」「雇用」を引き下げた。
景気判断、「悪化」はリーマン・ショック後の09年以来
政府は昨年以降、生産・輸出の悪化が続いても人手不足を背景にした良好な雇用環境をベースに「景気は緩やかな回復を続けている」と強調してきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて3月に6年9カ月ぶりに「回復」の文言を削除し判断を引き下げ、4月はさらに下方修正した。
景気判断を2カ月連続で引き下げるのは2014年9月─10月以来。景気判断に「悪化」という表現を使ったのは、リーマン・ショックの余波で世界的に景気が後退していた2009年5月以来となる。
内閣府幹部は、景気の局面について「上昇か下降かといわれたら、下降局面という認識で景気をみている」と述べ、先行きについても「感染症の影響による、極めて厳しい状況が続くと見込まれる」とした。
企業収益・業況判断・生産、いずれも悪化「急速」
項目別では、全14項目のうち6項目で判断を引き下げた。「企業収益」「業況判断」「個人消費」は、それぞれ3月の「弱含んでいる」や「悪化している」から、4月は「急速に」減少・悪化しているなどに下方修正。「輸出」は「弱含んでいる」から「減少している」に修正した。
「企業収益」は「弱含んでいる」から「急速に減少している」に修正。新型ウイルス感染症の影響により、2020年度上期の経常利益計画は「全産業」で前年同月比マイナス7.2%を見込んでいる。また、感染拡大で需要が減少したことで、3月の小規模事業者は赤字企業の割合が大幅な超過となる見通し。
「業況判断」も、「悪化している」から「急速に悪化している」に引き下げた。景気ウオッチャー調査では、街角景気は飲食、サービスを中心に、これまで過去最低だったリーマン・ショック時を下回る極めて厳しい状況となっている。
「個人消費」は「このところ弱い動きとなっている」から「急速に減少している」に下方修正した。消費者態度指数は大幅に落ち込んでおり、3月の低下幅は調査開始以来最大となった。
「輸出」も「このところ減少している」へと下方修正された。下方修正は19年1月以来。
欧米経済は「極めて厳しい」、中国は持ち直しの動きも
世界経済全体では、新型ウイルス大流行の影響で大幅なマイナス成長を見込んでいる。
感染拡大が深刻な米国や欧州のについては、ともに「景気は急速に悪化しており、極めて厳しい状況にある」と判断した。
一方、工場が再開したことや感染者が減少傾向にある中国については「引き続き厳しい状況にあるものの、足元では持ち直しの動きもみられる」としている。
ただ、内閣府は「(中国経済は)持ち直しの動きの兆しがみられるのは間違いないが、基本的には厳しい状況にあるというのは変わらない」と指摘。日本と世界経済全体への影響について警戒感を示した。