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落語家・立川志ら乃のスーパーマーケット徒然草 第10回 成城石井の旨すぎる寿司が起こした奇跡

とある日、落語会帰りに立ち寄った新宿の成城石井。お気に入りのとある商品の魅力について同行スタッフに熱弁をふるっていたら、見ず知らずに人に突然声を掛けられた! そんな”出会い”もスーパー打ち上げの魅力なのです。

何度でも言っちゃう。成城石井の寿司が旨すぎる!

 成城石井の「国産生本鮪4貫とこぼれいくら入り8種の握り」――。

 「そんなに旨くなくてもいいよ!」

 「本当にこの値段でこんなことしちゃっていいの?」

 「互いにフトコロ厳しいんだから無理しないで!」

 と、心の中で叫びながらかなりリピートしております。

 先日、ウェブ配信の落語会終了後、スタッフと二人で新宿駅構内の成城石井へ。この日の落語会でも「成城石井の寿司が旨かった!」という話を私がしていたので、

 「師匠が言っていたお寿司まだありますかね?」

  とスタッフも気になっていたようで、2人して足早に売場へ。

  閉店間際の時間ではあったのですが、ありました。「20%引き」のシールが貼られた「成城石井の国産生本鮪4貫とこぼれいくら入り8種の握り」が3パックも!!

  これは買うしかないとカゴに入れようとしたのですが、スタッフがその値段を見て一言。

 「これ 20%引きでも結構な値段なんですね…」

 すべての勘定を私が払うスーパー打ち上げなので、申し訳ないという気持ちが生まれたのでしょう。

 なので、私はそやつに財布の中身を見せながら、

 「俺はお前が思っているよりも金を持っているんだ!」

 「それにスーパー打ち上げは同じものを好きな場所&時間で食べるというのがそもそものコンセプトだ」

 「割引じゃなくても、あれば買う予定だった」

  と、マスク越しに熱弁を振るったのでした。

  「わかりましたよ! じゃあ、お言葉に甘えて…」

  と、スタッフがカゴに入れてこの話はおしまい…じゃない。

「あの…私もそのスーパー打ち上げに参加してもいいですか?」

成城石井の「生本鮪4貫とこぼれいくら入り8種の握り」

 熱弁を振るっててテンションが上がった私はさらに、カゴに入れた2パックの「成城石井の国産生本鮪4貫とこぼれいくら入り8種の握り」を指さしながら、

   「まずいきなり鮪を食うな、だからと言っていくらでもない。それ以外の何かを食べてから鮪に行け」

  「鮪がかなり旨いから、その旨さを脳が覚えているとほかのネタも本当は旨いのに、(鮪に比べると)なんだかそうでもないような錯覚に陥ってしまうからだ」

 「いくらの軍艦は1貫で2貫分くらいの量なので、中盤あたりに持って行きたい」

 「落語会でも最初は軽めのネタ、仲入り休憩前の一席はややしっかりしたネタ、休憩開けは明るく派手めなネタでトリはじっくりみたいな感じが基本線だろ」

  と、余計なお世話この上ない話で盛り上がっていると、まったく見ず知らずの若い女性が、

  「あの…このお寿司、そんなに美味しいんですか?」 

 と、ちょっと笑いながら声を掛けて来たのです。そして、

  「私もそのスーパー打ち上げに参加してもいいですか?(笑)」

  …!!!!!!

  なんとなく横にずっと人がいるなぁと気配は感じてましたが、まさかすべてを聞かれていたとは露知らず。

  「ええ!もちろんですとも!!」

 スーパー打ち上げ、見知らぬ人との同時開催は史上初。

  「それじゃあ」

  と、ご自身のカゴに最後の「成城石井の国産生本鮪4貫とこぼれいくら入り8種の握り」を入れたその女性。マスク越しでも微笑んでいるのがわかりました。

  こちらはその後スイーツの棚など回ってからレジに並びました。するとちょうど、先ほどの方が隣のレジで会計するというタイミング。先に会計を済ませたその女性は、軽くこちらに会釈をしてスーパー打ち上げの会場(=彼女の自宅)へ向かって行ったのでありました。

  今、スーパーでは「大人数で行かない」「人と距離を置く」「買物を素早く済ませる」ということが非常に重要なので、上記のようなことはもはや”迷惑行為”に当たる可能性すらあるので気を付けないといけません。

 そうは思いつつも、旨そうなお総菜を指さしながら、

  「うまそうだなぁ~!これっ!!」

 って、どうしても言っちゃう。

 

 

立川志ら乃

1974年2月24日生まれ。98年3月、立川志らくへ入門。2012年12月に真打ち昇進。16年7月に「スーパーマーケットが好きである」ことを突如自覚。スーパーに関する創作落語に「グロサリー部門」「大豆なおしらせ」など。

Twitter:@tatekawashirano

ブログ:https://ameblo.jp/st-blog/