[東京 2日 ロイター] – 政府が7日にも閣議決定を予定している経済対策には、与野党の一部から強い要望のあった消費税率の引き下げは盛り込まれない見通しとなった。それでも一部の与党幹部は減税に含みを残す発言をしており、コロナショック長期化で第2、第3の経済対策が必要な局面では議論が再浮上する可能性がある。
消費税率10%からの引き下げについては与野党の多くの議員から要望が出ていた。自民党の安藤裕衆院議員ら若手議員は3月11─12日、消費税の事実上の撤廃を含む30兆円規模の経済対策の提言を西村康稔経済再生相、二階俊博幹事長、岸田文雄政調会長らに提出した。
野党サイドでもかねてより共産党やれいわ新選組が消費減税を主張、国民民主党も消費税率の5%への引き下げを提唱している。野党で唯一、減税を訴えていなかった立憲民主党でも、若手有志らが5%以下への引き下げを求めつつある。
1日の参院決算委員会では自民党の西田昌司参院議員が「消費税10%を当面ゼロにすることが必要だ。首相が今の危機に対応するため政治決断すればできる」と質問したが、安倍晋三首相は「期待には十分応えられないかもしれない」と述べ、10%への引き上げは幼児教育の無償化など全世代型社会保障改革に必要だと強調。消費減税に否定的な見解を示した。
岸田自民政調会長は「消費税は基幹税であり、引き下げると感染終息後の平時に戻すのが難しい」(3月30日)と記者団に話している。
ただ、政府・与党内で消費税減税論が全くなくなったわけではなさそうだ。安藤氏らと共に消費税減税を提唱している自民党の青山繁晴参院議員は3月30日、首相官邸で、減税提言書を岡田直樹官房副長官に手渡し、「現在検討中の経済対策に消費税引き下げが採用されなくても、その後の対策では必ず選択肢として検討するよう首相に伝えてほしいと要請した」と述べた。青山氏らは3月30日、消費税率5%への引き下げなどを求める緊急声明を発表。青山氏は「党内には100人以上の減税勢力が誕生した」と述べた。
自民党の世耕弘成参院幹事長も3月31日の定例会見で消費税減税について「ポイント還元など他にも消費喚起手段はある」、「一度引き下げると再び上げるのが難しい」と慎重姿勢を示しつつ、仮に減税すれば「政府はそこまでするのか、という強いメッセージなる」ともコメント。中期的な選択肢として含みを残した。
ある政府高官周辺は「消費税減税について首相も今は否定的。新型コロナの影響がどれほど長引くか見えないなかで、今切るカードではない」と解説。先々の政策手段として段階的な消費税率引き下げは議論され得るとの見解を示した。