コンビニチェーン進化史(イースト新書)
著者:梅澤聡
もう、セブンペイの不正利用はずいぶん前の話題のように感じるが、2019年7月のことである。そして下半期は大手3社、果ては経済産業省を巻き込んで(に巻き込まれて?)の「構造改革」の波…。
コンビニ業界にとって2019年は、多くの点で脚光を浴び、また、一つの転換点になった年として記憶に刻まれるのではないだろうか。
拡大の一途をたどったコンビニの出店数は5万8000店(2019年12月時点)を超え、すでに飽和状態にあると考えられる。そんな中での異業種との競争や人口減、高齢化、IT化の波が押し寄せる。
あらゆる波に必死に対応している最中、人手不足という大波。「強すぎる本部」対「大変なフランチャイズ」の図式があっという間に世論形成されてしまった。世論にも押される形で、改革は待ったなしに迫られている。
ではなぜ、コンビニはここまで成長を続けることができたのか?日本にコンビニという業態が現れだした当時の「スーパーの補完」的な役割から、「社会インフラ」と呼ばれるまでになった背景とは?
「コンビニチェーン進化史」は、そんなコンビニ業界の歴史を、当時の月刊コンビニの記事などを引用しながら解説していく。
本書でコンビニは「驚異のイノベーションの宝庫」であるといわれているが、本書を読み進めていくと、なるほど、納得である。
コンビニ弁当は数年前までは「体に悪い」といった評判や「時間がないときに仕方なく…」といった利用が多勢だったように思える。それが今では、健康に敏感な女性がコンビニに「あえて買いに来る」。
ここに至るまでに、どれだけのイノベーションがあっただろうか?ある日突然、顧客の行動が変わることはあり得ない。コピー機を設置し、写真を受け取れるようにし、24時間ATMからお金が引き出せ、さっと挽きたてのコーヒーが飲める。顧客のニーズに何よりも敏感だからこそ、徐々に人々のライフスタイルに浸透していったのであろう。
しかし、このモデルも転換点である。では今後、コンビニ業界はどう進んでいくのか?まずは本書からどのようにコンビニが進化してきたかを勉強されたい。「賢者は歴史から学ぶ」という偉人の教えに沿って。
「ローソンはなぜロゴが牛乳瓶か?」これもコンビニの歴史である。業界関係者だけでなくとも、飽きることなく読み進められる。