[東京 8日 ロイター] – 11月ロイター企業調査によると、この2年間で日本列島を襲った自然災害の被害を受けた企業は全体の76%にのぼることが明らかになった。復旧に1週間超かかったとの回答が6割を超え、現状復帰にはある程度の時間がかかることも分かった。自然災害の規模や被害の大きさは年々増しており、あらためて対策を検討している企業も4割程度ある。政府の国土強靭化計画に対して、予算の追加を望む声は6割弱を占めた。
調査期間は10月23日─11月1日。調査票発送企業は503社程度、回答社数は250社程度だった。
半数が直接被害、復旧には時間
昨年の西日本豪雨や北海道胆振東部地震、今年相次いだ台風など、最近の自然災害は全国にまたがって発生している。調査結果では、回答企業の76%で何らかの影響があった。
具体的には、半数の企業が建物浸水や倒壊など直接的な被害を受けたほか、取引先や顧客の需要の変化を挙げた企業も37%を占めた。生産出荷の停滞、物流網・サプライチェーンの寸断も起きた。
10月の台風19号の影響でJR東日本<9020.T>では北陸新幹線車両基地が浸水。運輸業からは「河川敷に近い場所に車両基地が点在しているため、対策を検討する」とのコメントが寄せられた。
小売やサービスでは「販売商品の破損」(小売)、「高速バスの運休」(運輸)、「イベント中止」(サービス)、「宴席キャンセル」(サービス)など、売り上げへの影響も幅広くあった。
いったんこうした被害が出ると、復旧に相当時間がかかることも判明した。3日以内の早期復旧は14%と少なく、1週間経っても3割程度しか復旧していない。1カ月経つと7割程度が復旧。残り3割は数カ月以上かかっている。
製造業では、製造ラインが止まり代替生産拠点を手配することに追われた例もある。パナソニック<6752.T>は、台風の影響で「電子材料を作っている郡山の工場が浸水し、補修に2カ月程度かかる」(10月31日の決算会見で梅田博和・最高財務責任者)と明らかにしている。
4割が自然災害備えで対策検討、主流は「分散型」
多くの企業が被災していることから、大型台風や地震に備えての災害対策を検討し始めているところも目立つ。回答企業のおよそ4割程度が生産・物流拠点やサプライチェーン網の見直しを計画している。
製造業では、生産拠点の分散化の動きも出ている。「国内生産拠点の新設も選択肢。各地の自然災害への耐性調査を進めていく」(ゴム)、「国内外に22カ所の生産拠点を構築しリスク分散を図る」(金属一般機械)といった声が目立つ。
非製造業でも「サプライチェーンは分散と集約を逐次検討」(サ-ビス)、「代替が可能なものは仕入先を増やす」(卸売)といった調達先の工夫のほかに、「浸水に備えた止水板の整備や非常用電源の確保を検討」(運輸)といった例もある。
国土強靭化、半数超が予算上積み必要と回答
政府が昨年予算計上した7兆円の国土強靭化化3カ年計画について、昨今の自然災害の被害状況を踏まえて「予算が不十分」とみている企業は57%を占めた。
もともとこの計画は老朽化インフラへの対策だが、それ以外にも、台風被害を想定して「堤防の強化」を重視すべきと4割近くの企業が回答した。また、千葉県で強風による電柱倒壊や停電の被害が大きかったこともあり、「電柱地中化」を挙げる声もある。
ただ、財源に限りがある中では「新しく作るより現在ある設備、施設の老朽化対策が先決」(小売)であり、その中でも「軽重をつけた対応が必要」(輸送用機器)といった声が目立つ。
また「ハード面での対応には限界があるため、避難方法の周知徹底などソフト強化を合わせて実施する必要がある」(化学)、「縦割り行政では災害は防げない。防災省など専門機関が他府県や建設業団体を調整して対応する必要がある」(紙パルプ)といった指摘も出ている。
今後も巨大台風や豪雨の脅威は高まると予想されていることから、「全てのカバー(予防)は困難と割り切り、迅速な復旧に主眼を置いた体制の方が重要」(サービス)との声もあった。