後輩の落語家・立川談吉を半強制的に引き連れ、東京・江古田周辺のスーパーを「全部」回るという大胆な計画を思いついた立川志ら乃。周到に準備を整え、ついにスーパー回り当日を迎えた。いくつかの店舗を回るうちに、10年近い付き合いの談吉が意外な一面を持っていることが判明し…。
前編はこちら
打ち合わせの段階から妙なテンションに…
現在は誰かとスーパー巡りを共にする”スーパー同伴”の仕方がある程度わかってきましたが、その時はまだスーパー同伴に対して初々しさ満点の時期だったので、念のため談吉と当日のタイムスケジュールなどを決める打ち合わせをしました。
「12時に都営大江戸線新江古田駅の出口を出たところに『マルエツ』があるから、そこから回ろう。それでここをこう行って、この辺りで飯を食って…15時くらいに解散で」
旅行というものにまったく興味を持たずに人生を送って来たので、「誰かとどこかに行く」ために計画を立てるのがこんなにも楽しいものだったのかと驚いたものです。
談吉にいろいろ説明をしたところ、
「大江戸線の駅はあまり使わないから、こんなところにスーパーがあるって知りませんでしたよ!」
とやや興奮気味の談吉。
「そりゃそうだよ、ふだん使ってる駅の近くのスーパーさえ見逃すことが多いのに、使わない駅の近くのスーパーを知ってるほうが変なんだから心配いらないよ!」
大丈夫かこの会話…?と思わないこともありませんでしたが、すぐに当日がやってきました。
マルエツで初めて知った、談吉が「料理男子」だという事実…
待ちに待った「江古田スーパーめぐり」の日。駅で談吉と落ち合った後、まずはマルエツへ。
「で、このスーパーの見どころってどこなんですか?」
ん…?
んん…?
マルエツに見どころってあるのか…?(だいぶ失礼)
意識的にスーパー通いを始めたばかりの頃だったので、談吉のそのピュアな質問に対するシンプルな答えを持ち合わせてはいませんでした。ん~と唸っている私を尻目に、
「あれ?肉の種類が豊富じゃないですか!」
と、自らどんどん歩きだす談吉。
「私は兄さんみたいにお惣菜よりも食材を買うタイプなので、この品揃えはちょっと魅力的ですよ」
「そっ…そうなの?」
10年近く落語会で一緒に過ごしてきた談吉が、自宅で肉料理を作ることをここで初めて知り、
「それを知れただけでも、今日マルエツに一緒に来た甲斐があるってもんだよ」
と、どこから目線なのかわからない返事をする私なのでした。
「えのたん」って誰だよ! えのき1つで大はしゃぎ
さて、マルエツのすべての売場を踏破し、次に向かったのはスーパーオオクラ(※編集部注:現在は閉店)。
ここでは、えのきの包装袋に「えのたん」という謎のキャラクターを見つけて大はしゃぎ。
「なんだよえのたんって!!」
と興奮しながら検索をかけると、「ゆるキャラ」としてちゃんとしたオフィシャルホームページまで出て来て、自分たちの無知にシュンとする。
でも、「無知の知」こそがスーパー回りのテーマでもあり、「無知の知」って「ムチムチ」と音が似ていてちょっといやらしいねということではないのです。
すると、「兄さん、このえのきの袋には下の方に線が引いてあるの知ってます?」
急な談吉からの問いかけ。
「どういうこと?」
「この線を包丁でそのまま切ると、中のえのきの根の部分も切り落とせるようになるんですよ」と。
この件に関してはまだ調査中ですが、確かにスーパーに並ぶえのきには、パッケージの下の方に線が引かれていることが多いのは事実。この連載を見ている方なら正解を知ってる人もいるはずと、書いてみました。是非編集部までご一報下さい。
そんな今はなきオオクラを後にした我々は、約50メートルくらい先にある「スーパーみらべる」へ。そこでは、肉料理に腕を振るう談吉が、実はプリンにもうるさいことが判明するのでした。