[東京 10日 ロイター] – 日銀は10日、地域経済報告(さくらレポート)別冊を公表し、インバウンドに対する企業や自治体の取り組みや地域活性化に向けた課題をまとめた。高齢化や人口減に対する危機感が強い地方では、インバウンド需要を積極的に取り込んでいくとの声が多く聞かれたほか、宿泊業の設備投資増加などにもつながっている。今後もインバウンド需要の増加基調は続くと見られており、住民や環境との共生などが課題となっている。
2018年の訪日外国人旅行者数は3119万人で過去最高を記録。自然災害の影響を受けた夏場を除けば、プラス圏で推移していた。
日銀がまとめたレポートによると「人口が減少する中、インバウンド需要で売上げの維持・拡大を図る」(飲食・函館)、「バブル期の苦い経験から、インバウンドで街を再興との思いが強い」(不動産・新潟)など、地方でもインバウンド需要獲得に前向きな声が多い。Wi-Fiの整備やキャッシュレス対応、音声翻訳技術の活用など、環境の整備も進められているという。
また、地方の宿泊業の工事予定額も、2013年から18年に4.7倍に拡大。日銀レポートでは「インバウンド需要は、宿泊業の設備投資増加に相応に寄与していると考えられる」としている。
先行き、インバウンド需要は伸びが続くと見込まれている。インバウンド需要を地域活性化につなげるための課題としては、地域全体での「連携」や地方への「分散」、住民や環境との「共生」が大事だと指摘した。ごみ問題や渋滞などの「オーバーツーリズム」問題に対しては、地元住民優先とする社会実験や「観光目的税」の導入を検討する動きも出ている。レポートでは「地域にとって観光は地域活性化につながる成長戦略の柱のひとつ」とし、地域活性化につながった明るい動きが「さらに広がって行くか注目される」としている。
(清水律子)