「スーパー大好き!」と言い続けていたらAJSさんに呼ばれて…
この連載がきっかけとなり、オール日本スーパーマーケット協会(AJS)さんの「12月度トップ経営研修会」で1時間しゃべってきました!
5年くらい前までは「落語会の高座でスーパーの話をしたところで誰も興味ないだろう」という先入観から、足しげく通っていながらもスーパーの話はしていませんでしたが、ある日の落語会でスーパー話をしてみたら予想以上の手ごたえ。林家彦いち師匠から「マクラだけじゃなくて新作落語にしてみたら?」という言葉もいただき、新作落語「グロサリー部門」などをつくり始める。そして調子に乗ってスーパーに関するトークイベントなどまで開催し始めたころ、この連載の依頼。そしてそこから冒頭の出来事につながるのです。
好きなものは「好き!」と言っておくべきだと、心の底から思った次第です。
フレスコ、ライフ、エビスク、ロピア……京都のスーパーを片っ端から訪問!
さて本番は12月9日、会場は京都のホテルオークラ。この依頼が来た時、真っ先に「京都 スーパー」で検索を掛けたことは言うまでもありません。
「フレスコ」というスーパーがそこかしこにあることがわかり、「これは『まいばすけっと』的なやつか…?」と想像し京都出身の知り合いに聞いてみたら「『まいばす』よりも”スーパー感”ありますよ!」とのこと。「フレスコ四条店」に行きましたが実際そのとおりでした。商品で特に印象的だったのは総菜売場にあった「昔のコロッケ」。衣がしっかりしていて、肉屋のコロッケ感があり大満足でした。
そして私はふだん「ライフ」によく行くのですが、関西圏のライフには行ったことがないので、9月にオープンした「四条烏丸店」へ。店の中は東京のライフとほぼ同じような雰囲気で、「同じだぁ…このクオリティを全国展開してるのかぁ…」とライフの実力の高さと事業規模の大きさをあらためて実感するのでした。
さらに、大正七年創業という京都の超老舗、「エビスク」というスーパーへ。「個人店を拡張したのかな?」と思えるような”建て増し感”があり、外から見る印象よりもかなり広い。コストコの商品を扱っていたり、店の入口付近で近所のお菓子屋さんが出張販売を定期的に行っていたりと、地元の方々の声を丁寧に聞きながら営業されているという印象を強く受けました。
さらにさらに、検索した時には出てこなかった「ロピア」が京都ヨドバシの地下に開業していたことが当日わかり、もちろん入店。それはそれはえげつない店を展開していましたよ。「こんなのできたら周りの競合が困っちゃうよ!」と勝手に心配してしまうくらい破壊力のある店内。入口の青果コーナーの通路がS字になっていて、「まずはすべての野菜と果物を見ていただかないとその先には進めませんよ!」(あくまでも想像ですが)という強気なレイアウト。そしていつから流れ始めたのか、印象的なオリジナルソングが店内で繰り返し流れていました。
このほか、寿司は一貫ずつ選べるようなコーナーなどがあり、パンもオリジナルブランド「7/7」というものを始めていました。正直、心の底から「生活圏にロピアが欲しい」と思いました。なので、神奈川の橋本近辺で落語会を始めようと本気で画策中です。
普段の落語会とはまったく違う雰囲気に圧倒される
さてさて講演会の話ですが、「スーパー好きな人たちが集まっているのだからめちゃくちゃウェルカム状態だろう」と気楽な気分でいたのは、会場に着く直前まで。会場受付横を通り過ぎ控室に通されたところで、
「いや待てよ、学校寄席とか客席が内輪の何かでくくられている時、いつもの感じで出て行ったらとんでもない惨劇が訪れることがあるよな」
という過去の経験から”何か”を感じた私は、会場の様子を見るため、そのとき行われていたAJSの田尻一会長の講演をこっそり拝聴。その場の雰囲気からして、
「これは予想的中の可能性ありだな」
と思いましたが、本番直前でやり方を変えることはできないし、そもそも替えがない。
結果、思っていたとおり、ふだんの落語会とはまったく違う空気が京都ホテルオークラに流れました。まったく反応がない、ということではなく、落語会での反応とあまりにも違い、かなり面食らったというのが正直な感想です。
そして私は帰りの新幹線でようやく気が付いたのです。落語会でスーパーの話をしている時は私がその現場で一番スーパーに対しての熱量が高いことが多いのですが、この日は私の熱量を遥かに超えた人たちしか現場にいなかったのです。これを落語界に置き換えて考えると、落語家200人が集まって今後の落語界についての話をしているところに、他ジャンルの誰だかよく知らない人が出て来て、「数年前から落語にめちゃくちゃ興味持ちました!みなさんはどうですか?」みたいなことを言うのに近いのではないか…と。そのとき一瞬意識が遠のきました。
ちょっと考えればわかりそうなもんだろと思うかもしれませんが、そんなことがわかる人間じゃないんです私は! でも始まる前に気が付いていたら、怖くて高座に上がれなくなっていたかもしれないので気付かなくてよかった!
こういう講演の依頼は今後来ないだろうと思うし、来たら断ろうとも思いましたが、私のことを呼んでくれた運営の女性の方から届いたお礼のメールに、「志ら乃師匠のスーパーを気軽に楽しんでる雰囲気をこの会合にも欲しくて今回お呼び致しました」という旨の文面が書かれており、これは運営の方の心の声だなと感じた次第。もし、同様の依頼をまたいただいた場合はどのような話をするかということを考え始めました。
一般のスーパー利用者という立場から感じた話をするのはもちろんいいと思うのですが、事務方が一人もいない落語立川流の一門会の運営を現在私がほぼ一人で行っているというレアな立場の目線をどうしてもっと入れなかったのかなど、いろんな反省や改善策を思考中です。「お店を運営するうえで従業員から上がってくる、聞いた方がいい意見とそうでない意見の線引きどうしてますか?」みたいな話とかを振ってみてもおもしろいのかな、と。
久々に目が覚めるような経験をさせてくださった「オール日本スーパーマーケット協会」さま! 本当にありがとうございます!!
立川志ら乃
1974年2月24日生まれ。98年3月、立川志らくへ入門。2012年12月に真打ち昇進。16年7月に「スーパーマーケットが好きである」ことを突如自覚。スーパーに関する創作落語に「グロサリー部門」「大豆なおしらせ」など。寄席やイベントなどのスケジュールは下記Twitter・ブログをご参照ください。
Twitter:@tatekawashirano
ブログ:https://ameblo.jp/st-blog/